中枢型肺腺癌では骨転移が多く予後不良

New insights into the impact of primary lung adenocarcinoma location on metastatic sites and sequence: A multicenter cohort study.

Klikovits T,
Lung Cancer. 2018 Dec;126:139-148.
PMID: 30527178

Abs of abs.
肺腺癌において臓器転移の存在は予後不良因子である。しかし、原発巣と転移部位とその転帰については詳細な分析がなされていない。今回は疾患経過中における原発巣と転移部位の位置に焦点を当て、1126人の白人の肺腺癌患者の臨床病理学的データを使用し多施設共同コホート研究を行った。肺内転移(p<0.001)、胸膜転移(p<0.001)および副腎転移(p<0.001)は経過中より早期に発生し、中枢型腫瘍は早期転移と関連していた(オッズ比1.43、p=0.02)。続いての探索的解析において、中枢型腫瘍を有する場合、骨転移がより多く見られ(オッズ比1.86、P=0.017)、末梢型では肺転移が多かった(オッズ比1.35、P=0.015)。中枢型腺癌では、全生存期間の短縮(末梢型に対し、10.2ヶ月vs 22ヶ月)しており、これは単変量解析(ハザード比 2.075、p=0.001)と多変量解析(ハザード比 1.558、p<0.001)の両方で見られ、病期およびT因子とは無関係であった。追加解析により、転移が独立して見た場合、骨転移+副腎および肝転移は、皮膚+副腎および心外膜の転移+胸膜よりも頻繁に現れる傾向がある。今回の大規模コホート解析から、肺腺癌患者における転移部位および転帰のパターンがあることが示された。中枢型腺癌は早期に転移を来しやすいこと、特に骨病変との関連があり、生存率が低下していた。

感想
遺伝子解析が全盛を極める中、高度な遺伝情報は全くない腫瘍の位置、転移部位に関する地道な研究です。中枢型腫瘍は古典的には喫煙者の扁平上皮癌に多く、中枢型腺癌にはなにか違うものを感じていました。内容を見ていくと、1000人を超える白人での肺腺癌のデータで、発生は右>左で、比率は60%対40%で、末梢対中枢もこの割合でした。上中葉と下葉の日は66%対33%でした。このような単純集計も実は探すのが難しく今後資料としても使えそうです。転移部位に関しては、早期(診断時から1ヵ月以内に同定)と後期(それ以降)に分けています。肺内転移、胸膜転移、副腎転移は早期に多く、脳転移は後期に多くなっていました。そのほか骨、肝臓、皮下などはこれといった傾向がありませんでした。上中葉と下葉では、全体的に下葉発生の転移が多く、中でも胸膜転移が多くなっていました。末梢型と中枢型の比較では、中枢型には早期の転移が多く、なかでも骨転移の割合が多くなっていました。予後について、中枢型が明らかに悪いのですが、面白いことに左右差はなく、また上中葉と下葉との差も全く見られませんでした。繰り返しになりますが、このような単純比較のデータも見たことがなく、この論文の資料的価値があると思います。またオリゴメタの関連でよく見かけるようになりましたが、今回も転移部位が1個と2個では、予後に差があり再現性のあるデータとなっています。このようなデータがドライバー変異の存在によって変わってくる可能性はありますが、臨床をしていく上で「今後出現が予想される頻度の高い転移部位」がわかれば画像検査もしやすくなりますし、見込みも立てやすくなります。遺伝子パネルなども導入が見込まれますが、身長、体重といった基本的な検査値と経過を集団としてまとめて見てみるという作業から、まだまだ得られるものが多いような気がしています。