再発小細胞肺癌に対するニボルマブの効果

Third-Line Nivolumab Monotherapy in Recurrent SCLC: CheckMate 032.

Ready N et al.
J Thorac Oncol. 2019 Feb;14(2):237-244.
PMID: 30316010

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再発小細胞肺癌に対して、2次治療で認められているのはトポテカンのみであり、その予後は不良である。CheckMate032試験は、多施設共同オープンラベルの第1/2相試験であり、ニボルマブまたはニボルマブ+イピリムマブの投与を、1レジメン以上を使用後進行した小細胞癌あるいは他の固形腫瘍に対して行う試験である。今回は小細胞肺癌に対し、3次治療以降にニボルマブ単剤を投与した症例について報告する。2レジメン以降の限局型あるいは進展型小細胞肺癌を対象とし、ニボルマブ3mg/kgを2週毎に病勢進行または毒性が許容できなくなるまで投与した。プライマリーエンドポイントは奏効率で副次項目として奏効期間、無増悪生存期間、全生存期間および安全性とした。2013年から2016年に109人が3次治療以降でニボルマブ単剤を投与された。追跡期間中央値は28.3ヶ月で、奏効率は11.9%[6.5-19.5]で、奏効期間中央値は17.9ヶ月[3.0-42.1]であった。6ヶ月無増悪生存率は17.2%で、12ヶ月生存率は28.3%、18ヶ月生存率は20.0%となった。グレード3,4の有害事象は11.9%に見られた。3人(2.8%)の患者は有害事象のため治療中止した。本研究から3次治療以降の小細胞肺癌において、ニボルマブ単剤投与は長期の奏効と安全性があるものと考えられる。この結果はこれらの患者群においてニボルマブが有効であることを示唆している。

感想
CheckMate032試験は、プラチナ製剤を含む治療を1または2レジメン施行後に進行した小細胞肺癌が対象の試験です[Antonia SJ LancetOncol2016 PMID:27269741]。非ランダム化コホートとしてニボルマブ単剤、ニボルマブ+イピリムマブに割り付けるものと、ランダム化コホートとしてその2群に割り付けたものが存在します。今回はニボルマブ単剤に割り付けられ、かつ2レジメン以上の前治療があるものをピックアップして解析しています。背景として年齢中央値が64歳、喫煙者が92.7%、前レジメンは2が71.6%、sensitive caseが65.1%でした。28-8抗体で評価したPD-L1染色は1%未満が59.6%と陰性例が多く含まれます。全生存期間を見ると、24ヶ月を超えたあたりからいわゆる”tail plateau”となっており、その割合は15%くらいです。また先日取り上げた進展型小細胞肺癌に対するプラチナ製剤+エトポシド+アテゾリズマブの第Ⅲ相試験[Horn L NEJM2018 PMID:30280641]でのOSのtailは20%弱のところでした。好意的にみれば非小細胞肺癌より若干低いものの、小細胞肺癌にも免疫治療により長期生存が得られる集団がいる可能性がありそうです。
そこでこの長期利益を得られる集団を見出す努力が求められます。本文ではPD-L1染色では奏効の予測ができなかったと述べられており、別論文で、このCheckMate032試験でのニボルマブ単剤群のプール解析が行われ、TMBの検討がなされています[Hellmann MD CancerCell2018 PMID:29731394]。そこでは高TMB(全エクソームシークエンスで248変異以上)では奏効率21.3%、低TMBでは4.8%と大きな差が報告されています。さらに解析を期待したいところですが、これ以上の情報はなく何とも言い難いところです。このように小細胞肺癌と免疫治療の現状を、エディトリアルでは”Encouraging, but still awaiting the complete story”と評していますが、現在の状態は正にその通りと言えます。