小細胞癌における免疫療法併用化学療法、わずかだが確実な上乗せ

First-Line Atezolizumab plus Chemotherapy in Extensive-Stage Small-Cell Lung Cancer.

Horn L et al.
N Engl J Med. 2018 Sep 25. [Epub ahead of print]
PMID: 30280641

Abs of abs.
PD-L1とPD-1のシグナル伝達を阻害し腫瘍特異的T細胞免疫を増強することが、進展型小細胞肺癌の治療に有望であることが示されている。免疫チェックポイント阻害薬と殺細胞性抗がん剤の併用は、相乗効果を有し、有効性を改善することが期待される。未治療進展型小細胞肺癌に対するアテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシドの二重盲検プラセボ対照のフェーズⅢ試験を計画した。患者はアテゾリズマブかプラセボに1:1の比率で無作為に割り付けられて、カルボプラチンとエトポシドに加え21日間のサイクルで投与された(誘導期)。引き続き許容できない毒性の出現、臨床的に利益がなくなるまで、あるいはRECISTv1.1に従い病勢進行まで維持療法を行われた。2つのプライマリーエンドポイントとして、主治医評価の無増悪生存期間および全生存期間を設定した。計201人の患者がアテゾリズマブ群に割り当てられ、202人の患者がプラセボ群に割り付けされた。フォローアップ中央値13.9ヵ月で、全生存期間の中央値は、アテゾリズマブ群で12.3ヵ月、プラセボ群で10.3ヵ月であった(ハザード比0.70[0.54-0.91]:P=0.007)。無増悪生存期間中央値は、それぞれ5.2ヶ月および4.3ヶ月であった(ハザード比0.77[0.62-0.96];P=0.02)。安全性について個々の薬剤で既に報告されたものと一致した。本研究では初回の進展型小細胞肺癌の治療に際し、抗がん剤にアテゾリズマブを上乗せすることで、抗がん剤単独に比べて有意に長い全生存期間と無増悪生存期間を示した。

感想
小細胞肺癌に対する免疫チェックポイント阻害薬の初めての第Ⅲ相試験のpositive dataです。従来進展型小細胞肺癌は全生存期間においてなかなか1年に到達せず、血管新生阻害薬や投与方法の工夫によっても目覚ましい進歩が見られませんでした。日本においても再治療や予防的全脳照射の考え方が独自の進歩を遂げましたが、初回治療については長く有名なJCOG9511試験[Noda K NEJM2002 PMID:11784874]を超えられませんした。この報告による生存期間中央値は12.8ヶ月で、今回のアテゾリズマブ群のそれは12.3ヶ月とほぼ同等です。もちろんこの単純比較は御法度です。
本試験の生存曲線を見てみます。PFSは4ヶ月ころまでは完全に重なっており、その後少し開く傾向です。ハザード比は0.77でした。一方全生存期間はアテゾリズマブ群は重なることなく上にあり7ヶ月ころから開いていきます。ハザード比は0.70でした。殺細胞性抗がん剤ではPFSのハザード比は常にOSのそれより大きく(数値としては小さい)、生存期間が長くなるとその差は見えなくなると言われてきました。免疫チェックポイント阻害薬の場合はPFSのハザード比よりOSのハザード比の方が良く、PFSで両群が交差していてもOSではきれいに分かれていることに再現性があります。今回もその傾向は再現されており、小細胞肺癌にも免疫チェックポイント阻害薬のわずかながら上乗せ効果はあると言えそうです。細かいところを見ると偶然かもしれませんが65歳未満でアテゾリズマブの効果が弱い点、奏効率においてアテゾリズマブ群の方が悪い点(60% vs.64%)などいくつか気になる点があります。またこれまでイピリムマブ上乗せ[Reck M JCO2016 PMID:27458307]で失敗しており、今回成功した理由についても考察されています。それによるとアテゾリズマブがPD-L1だけでなく、PD-L1-B7-1経路を阻害し腫瘍内のTリンパ球を枯渇させず活性化させることにあるかもしれないとしています。CTLA-4阻害薬との違いだけでなく、PD-1とPD-L1阻害薬の違いはあるのかなど基礎的な知見も踏まえた上で今後の臨床試験の結果を見守る必要があります。