思わぬリンパ節転移、縦隔上方なら予後良好?

Surgically Treated Unsuspected N2-Positive NSCLC: Role of Extent and Location of Lymph Node Metastasis.

Andersson S
Clin Lung Cancer. 2018 Sep;19(5):418-425.
PMID: 29880414

Abs of abs.
同側縦隔または肺門リンパ節(LN)までの非小細胞肺癌において外科手術の役割には議論の余地がある。今回は縦隔または肺門リンパ節陽性の位置によって生存に影響を与えるかどうかを検討した。881人のデータから、予期しないN2または肺門リンパ節(#10)のLNを有する患者を分析した。患者は以下の群に分類された。A群:肺門#10陽性、B群:上方縦隔および大動脈LN(#1,2,3,4,5,6)、 C群:下方縦隔LN(#7,8,9)、D群:多発LN群(2つ以上のN2陽性)である。合計69人の病理学的N2患者と19人の病理学的N1患者が見られた。無増悪生存期間(PFS)は、B群対C群(P=0.044)およびB群対D群(P= 0.0086)で有意にB群(上方縦隔リンパ節転移)良好であった。A群とC群の間に全生存期間の差があまり見られなかった。B群とD群の間では、有意なOSの差が見出された(P=0.051)。結論として、下方のN2縦隔リンパ節陽性患者は、多発N2陽性患者と同等のOSおよびPFS不良を示すようである。また♯10肺門リンパ節陽性患者のOSおよびPFSは、下方のN2縦隔リンパ節陽性患者と類似している。上方の縦隔N2陽性患者は、下方縦隔の陽性N2群よりも良好なOSおよびPFSを示した。

感想
単発のN2転移について、上の方と下の方で予後が違うかということが主題です。リンパ節の位置の確認のためもう一度「成毛マップ」を見てみます。♯10はちょうど縦隔リンパ節と気管支周囲リンパ節の間に位置します。扱いとしてはN1ですが、今回の論文の主張として、単発の#10はむしろN2に近いふるまいということになります。ただしこの研究の前提が特殊であることを考慮し論文を読む必要があります。今回はCTステージングを基本とし61.4%にPETが使われています。その上でリンパ節転移陰性と読んで手術した症例が対象であり、あくまでリンパ節転移は「予期しなかった」ものです。したがって画像で明らかな単発リンパ節転移は今回の結論は応用できません。また組織型は統一されておらず、EGFR遺伝子などドライバー変異の情報もありません。その意味では少し古いタイプの研究です。しかし結論である「上縦隔のリンパ節転移より下縦隔のリンパ節転移の方が予後が悪い」というのは興味深い結果です。参照文献として、日本から報告された下葉発生例に限局したもののデータが挙げられています[Okada M J ThoracCardiovascSurg2005 PMID:15821650]。それによると予後は上縦隔<下縦隔<肺門となっています。本論文と相反する結果ではありますが、画像で予期できるものとそうでないものとの違いがあるかもしれません。この発生部位と予後との関連は、大腸癌の左右の予後の差にも似て、肺癌でも解析対象になるかもしれません。大腸癌の左右差についてはESMOでのCALGB80405試験の結果で注目されましたが、メタアナリシスでも示されています[Petrelli F JAMAOncol2016 PMID:27787550]。私はこの誰でも使えるデータでなにかを予測するという話が好きで、先入観にとらわれないようにしないと気づくのは難しいだろうと思います。