細胞診スメアでもPD-L1高発現は診断可能

Validation of the immunohistochemical expression of programmed death ligand 1 (PD-L1) on cytological smears in advanced non small cell lung cancer.

Capizzi E et al.
Lung Cancer. 2018 Dec;126:9-14.
PMID:30527198

Abs of abs.
免疫染色によるPD-L1発現評価は、進行非小細胞肺癌患者における抗PD-1チェックポイント阻害剤であるペムブロリズマブの初回治療の判断に必須の検査となっている。現在、ホルマリン固定パラフィン包埋検体について抗PD-L1抗体である22-C3、およびSP263を用いたPD-L1免疫染色が行われる。今回は非小細胞肺癌患者の50ペアの組織検体および細胞診標本における抗PD-L1抗体22-C3、28-8、SP263の正確性を後ろ向きに調べた。組織検体でのPD-L1の検出に関する3つの抗体の精度は、SP263(AUC/ROC=1)が高く、その他は28-8(AUC/ROC=.991)および22-C3(AUC/ROC=.942)であった。SP263抗体を用いた場合、組織検体と細胞診塗抹標本との間の一致率は中程度であった(カッパ値=0.364)。しかし、<50%対>=50%を対象とした場合、一致率は良好であった(カッパ値=0.626)。細胞診塗抹標本におけるSP263の精度は良好であった(AUC/ROC=.921)。免疫染色でPD-L1について陽性の10の組織検体についてのFISHでは、1つの症例においてのみCD274遺伝子の増幅を示した。非小細胞肺癌の診断に供される細胞診塗抹標本におけるPD-L1の免疫染色は、少なくとも>50%のカットオフ値を適用することで判断が可能となる。これら3つの抗体ではSP263が優れているものの、22-C3、28-8も含めすべて組織診断に適している。細胞診塗抹標本でのPD-L1免疫染色の導入により免疫療法の初回治療患者がさらに増える可能性がある。

感想
PD-L1評価に適した検体は、癌細胞が100個以上含まれた組織検体とされています。評価部位はどこでも良いのですが、唯一脱灰した骨検体は抗原性が低下しており避けるべきとされています(肺がん患者におけるPD-L1検査の手引き、日本肺癌学会2017)。またPD-L1検査22C3病理アトラス(MSD編)では、細胞診やセルブロック検体の信頼性は保証できないとしています。セルブロックの検体についてはPD-L1評価に適するとする論文も出ています[Wang H AnnOncol2018 PMID:29659668]。Wangらの論文におけるセルブロックは、洗浄液などの液性検体から細胞成分を集めたペレットを作りパラフィン包埋にし22C3抗体で染色しています。その上で手術検体、生検検体、セルブロック検体の全体のPD-L1発現割合を調べたもので、ペア検体による検討はわずかです。彼らは結局今回の論文と同じ結論、つまり50%をカットオフ値とすれば判定に有用としています。
今回の標本では組織検体、細胞診検体とも100個以上の癌細胞が含まれていることが条件になっています。一番良好であったSP263抗体での結果がTable2に示されています。それによると組織検体で1%未満とされたものが15例あり、そのうち13例が細胞診でも1%未満とされていました。これだけ見ると良さそうですが、組織検体で1-49%とされた20例中12例は細胞診で1%未満と診断されるといった乖離を示す部分もあります。それでも50%以上については組織の14例中9例の一致であり、陰性、強陽性の両極端は比較的診断できそうです。乖離の起こる原因として著者らは100個以上と規定したものの細胞数が少ない例があること、腫瘍の不均一性、検体の劣化などを挙げています。大方の予想通り細胞診では1-49%といったところがブレてしまうようです。細かなスコアリングは必要ないかもしれませんが、気にはなります。
先日免疫療法と殺細胞性抗がん剤の併用、PD-L1>=1%の初回ペムブロリズマブ単剤療法が承認されました。PD-L1に関わらず投与できる場合もありますが、単剤投与にしろ抗がん剤併用にしろPD-L1低発現では効果が減弱する傾向があるので、なんらかの形でPD-L1発現を確認していくことはこれからも必要でしょう。ただし高発現だからといって期待しすぎるのは禁物と思うようにしています。

あっという間に2018年も終わってしまいました。今年もご覧いただきありがとうございました。このブログは写真も、図も殆どなく殺風景なことこの上ないですが、シンプルと自負しています。表示しておりませんがアクセス数は月1万PV位で極めて安定(伸び悩み?)しています。本来は備忘録としてですが、見てくださる方もいるようなので、引き続き地道に続けていくつもりです。 来年も引き続きよろしくお願いします。