血漿DNAは腫瘍縮小を正確に反映する

Dynamics of EGFR Mutation Load in Plasma for Prediction of Treatment Response and Disease Progression in Patients With EGFR-Mutant Lung Adenocarcinoma.

Taus Á et al.
Clin Lung Cancer. 2018 Sep;19(5):387-394.
PMID: 29656868

Abs of abs.
EGFR遺伝子変異の有無は、肺腺癌患者の管理上重要である。循環腫瘍DNA(ctDNA)を基にした評価は侵襲が少なく、腫瘍のheterogeneityを捕らえる方法としても有利である。今回はEGFR遺伝子変異陽性の肺腺癌患者を連続して登録し、血漿試料を経過中の異なる時点で採取した。血漿中のEGFR遺伝子変異は、BEAMingまたはデジタルPCRを用いて定量し、腫瘍の変異および画像上の反応および進行と対比させた。33人の患者からの221の血漿サンプルを分析した。血漿中のEGFR遺伝子変異は、全患者の83%に認められ、中でも胸腔外転移を有する患者の100%で検出された。EGFR遺伝子変異の変化は、画像上の変化に先行し、93%の症例で奏効を予測し、89%の病勢進行を予測していた。治療中にctDNAが血漿中に検出されなくなった患者の無増悪生存期間は、ctDNAが持続的に検出された患者より有意に延長していた(295対55日;ハザード比17.1、P<0.001)。ctDNAでのEGFR遺伝子変異の検出は、ほとんどの患者において、腫瘍生検のそれとよく相関し、奏効および病勢進行と良好な相関を示した。ctDNAでのEGFR遺伝子変異評価は、診断目的でも実地臨床で患者をフォローアップする上でも信頼性の高い技術である。

感想
いわゆるリキッドバイオプシーが急速に臨床応用されています。現時点では、再生検困難なEGFR遺伝子変異陽性例の耐性出現時のT790M検索に使われています。今回の研究はDel19とL858Rのいわゆるactivating mutationをctDNAで見ていき、治療による変化と、T790Mの発現状態を見ています。結果はこれまでも言われている通りで、ファーストラインでEGFR-TKIの治療が行われた場合、画像上縮小している患者ではctDNAが低下していき、再発時には元々のmutationが多くなってくるもの、T790Mが増えてくるもの、両者に変化が見られないものが混在するといった状態を示します。耐性機序が一様でないことを反映していると理解されます。また治療開始後、血漿中にctDNAが検出されなくなった患者の無増悪生存期間は、ctDNAが検出可能なままである患者よりも有意に長いというところも類似報告の通りです。面白いのは画像評価で増大がみられるものは全例ctDNAが増加している点です。わずか4例であり決定的なことは言えませんが、初回治療前には思ったほど腫瘍の不均一性はないのかもしれません。それ以外に数は少ないですがゲフィチニブとアファチニブでのctDNA減少率も報告されています(93.3% vs. 82.6%)。アファチニブの方が減少率が大きそうに思うのですが。
現在、ctDNAモニタリングを意思決定に使えるところまで知見の集積がありません。このような細かいctDNA量をモニタリングが可能となれば様々な研究が考えられます。第1,2世代TKIで治療を開始した場合、T790Mが血中にわずかに出てきた時点でオシメルチニブに変更した方がいいのかとか、TKIの変更あるいは血管新生阻害薬の上乗せでctDNAが減少するのかなど興味は尽きません。私はまず今後保険適応が予想される免疫チェックポイント阻害薬+抗がん剤の併用におけるctDNAの変化を見てみたいところです。