「ドライバー変異なし」でもCGP検査で25%に標的遺伝子変異が見つかる

Clinical utility of comprehensive genomic profiling in non-small cell lung cancer: An analysis of a nation-wide database.

Fujii K et al.
Lung Cancer. 2025 Jan18;Epub ahead of print.
PMID:39842065.

Abs of abs,
進行非小細胞肺癌患者には、分子生物学的検査が推奨されている。検査を受けた患者は、そうでない患者よりも予後が良好だからである。 しかし最近の研究では、診断時の初回コンパニオン診断薬は、これまで報告されていたよりも検出率が低い可能性を指摘している。今回は全国規模のデータベースを解析することにより、非小細胞肺癌における包括的ゲノムプロファイリング(CGP)検査の有用性を明らかにする。C-CATデータを検索し、2019年6月から2023年8月までに登録された肺癌3240例の臨床データおよび遺伝子データを取得した。 なお組織検査を受けた患者と血漿検査を受けた患者は別々に解析している。 既知のドライバー変異があるものとないものをさらに別に解析した。 全肺癌患者3240人について、生殖細胞系の所見の有無を解析した。コンパニオン診断の結果が陰性であった患者の25%に組織CGP検査で、承認された阻害剤の適応があるドライバー変異が陽性であった。 組織CGP検査では、遺伝子変異と比較して遺伝子融合の検出率が低く(変異では93%、融合では73%、p<0.001)、血漿CGP検査では、組織検査と比較して変異と融合の両方の検出率が低かった(変異では69%、融合では37%、p<0.001)。 最後に、推定生殖細胞系変異は非小細胞肺癌患者の3.9-5.3%で検出された。コンパニオン診断検査で陰性と判定されていても、CGP検査、特に組織ベースのパネル検査で恩恵を受けた。 またCGP検査では既報と同程度の生殖細胞系列変異を検出した。

感想
現在行われている遺伝子パネル検査(CGP)で大学、がんセンターなどの先進施設でのF1とNCCオンコパネルを中心とした結果の一部です。元データ(C-CAT)は申請により利用が可能なようですが、テーマを見る限り先進施設と薬剤開発企業が使っているようです。今回は非小細胞肺癌に限ってのデータで、既知のドライバー変異なしとされた人がF1でどれだけ標的遺伝子が見つかるのかが大切な所です。割合としては25%にドライバー変異が見つかったとのことです。内訳はEGFR=7%、ERBB2=7%、KRASG12c=4%、RET=2.5%、MET=2.4%、ALK=0.8%、BRAFV600E=0.6%、ROS1=0.4%、NTRK=0.1%でした。もともと行われた遺伝子検査が何かによっても違いますが、一度やってドライバー変異が見つからなくともF1はやってみる価値がありそうです。特にEGFR遺伝子変異はすべて一度は測っているはずで、Cobasやオンコマイン、AmoyDXではF1と比較して46-66%をカバーしていないようです。また逆にドライバー変異がありとされるもので、F1で出てこなかったものは融合遺伝子で1/4程度あり、単純な遺伝子変異では7%程度で、F1でも万能というわけには行かないようです。血液サンプルからは組織検査より検出率はかなり落ちていました。わずかですが病原性生殖細胞系列変異(PGV)と推定生殖細胞病原性変異(PGPV)が5%程度見つかるのも問題です。現在のところ乳腺ほどではありませんが、遺伝カウンセリングも整っていない所では大変な負担ではないかと想像します。
さて実際このCGP検査を出してみると、詳細な治療歴が求められ慣れないうちは不足データの問い合わせが繰り返されます。すべてはC-CATに入力するためですが、かなり面倒です。うまく治験薬の可能性が見つかったとしても遠隔地であったりと、現在の薬が適応とならない変異については、東京などの大都市圏以外では事実上届けるのに困難を感じます。