Local ablative treatment for synchronous single organ oligometastatic lung cancer-A propensity score analysis of 180 patients.
Frost N et al.
Lung Cancer. 2018 Nov;125:164-173.
PMID: 30429016
Abs of abs.
局所治療(LAT)は、数の限られた転移(OMD)を伴う肺癌の転帰を改善し、潜在的な長期生存につながる。今回の後ろ向き研究の目的は、同時期のOMDにおけるLATによって追加される利益を定量評価し、さらに予後因子を同定することにある。ベルリンにある3病院において2000年から2016年の間に治療した転移個数が4以下の非小細胞肺癌および神経内分泌腫瘍患者を対象とした。患者数は180人で、疾患に関する変数による傾向スコアで一致するペアを作成し解析した。患者は、すべての転移について手術または定位放射線療法がされている群(治療群)と標準的な化学療法と必要時に緩和目的の局所治療(対照群)を行った群に分けられた。追跡期間中央値は、介入群および対照群で32.2ヶ月および18.8ヶ月であった。無増悪生存期間の中央値(25.1ヶ月対8.2ヶ月; ハザード比0.30[0.21-0.43];p<0.001)および全生存期間(60.4ヶ月対22.5カ月;ハザード比0.42; [0.28-0.62];p<0.001)はLATと関連していた。腺癌および原発巣がT1aであることも、PFSおよびOS良好の予測因子であった。N因子が若いこと(N0-2対3)および単発転移はPFS延長と関連し、初回ECOG-PS(0-1対2)はOSの予測因子となっていた。今回の検討では転移が4以下のOMDにおいて、LATがPFSおよびOSの最も強い予後予測因子となっていた。対照群における生存率は、OMDであることが予後良好なサブグループであった。
感想
前回に引き続きいわゆるオリゴメタの話題です。これまでオリゴメタに関するランダム化試験は小規模なものが2つ存在します。一つは49例を対象にした第Ⅱ相試験[Gomez DR LancetOncol2016 PMID:27789196]で、3か所以下の転移巣のある非小細胞肺癌にTKIを含む標準治療後に局所療法を追加した方がPFSが良好[11.9ヶ月 vs. 3.9ヶ月]で毒性追加はなかったという研究です。小規模なのは問題ですが、症例登録が進まなかったようです。もう一つは29例を対象とした単施設での第Ⅱ相試験[Iyengar P JAMAOncol2018 PMID:28973074]で、5個以下の転移巣がある非小細胞肺癌に化学療法を行ったあと維持療法に行く前に、定位照射をするかしないかでランダム化しています。PFSは9.7ヶ月 vs, 3.5ヶ月で定位照射で地固めを行った方が有意に良好であったという研究です。なかなか大規模には難しいということで、定番の傾向スコアあるいはメタアナリシスを使った研究[Petrelli F LungCancer2018 PMID:30527187]は早い者勝ちという状況です。
今回のオリゴメタの定義は、中枢神経以外のもので1から4個、診断から90日以内に確認され、病勢が安定しているものとなっています。原発巣は手術あるいは放射線(化学)療法で処置され、全身抗がん剤は必須とはしていません。傾向スコアをつけるため年齢、性、PS、組織型、腺癌の割合、EGFR/ALK変異に対する治療、T因子、N因子、胸腔内病変のステージ、PETステージング、脳の画像評価、転移部位と個数を因子として採用しています。当初は局所治療を行った107人と、対照群として1800人を用意し、最終的には治療群が90人、対照群が90人でマッチングしたデータセットを作成しています。マッチングされていない因子として化学療法の割合が、対照群で95.6%、治療群で78.9%と偏りがありました。この偏りは主に術前治療が治療群で36.7%、対照群で4.4%と大きく、その他目立つものとして外科手術での葉切が治療群で76.7%、対照群で11.1%と大きく偏っていました。つまりマッチングしたとは言え、最初から手術中心の治療で行くのか、(取り切れないので)化学療法主体で行くのか大きな判断の差、いわゆる選択バイアスが存在しているように感じます。しかし何とか調整した上で、全生存期間が大きく違うことはやはり局所治療が有効であることを示しています。今後局所療法は免疫療法の観点、特にアブスコパル効果との関連、そしてトータルコストの面から検討されることとなるでしょう。免疫+抗がん剤併用が認可目前と言われています。現時点では放射線治療での局所制御という意味合いよりも免疫療法の増強効果を期待します。つまりⅣ期の症例でも何らかの放射線治療を加えた上で免疫療法に持ち込むのががよいのではないかと思っています。