アダグラシブとソトラシブはほとんど差がない

Adagrasib versus docetaxel in KRAS G12C-mutated non-small-cell lung cancer (KRYSTAL-12): a randomised, open-label, phase 3 trial.

Barlesi F et al.
Lancet. 2025 Aug 9;406(10503):615-626.
PMID:40783289.

Abs of abs.
アダグラシブはKRAS G12C変異陽性の進行非小細胞肺癌に対して第2相で有望な成績を示した。今回は化学療法および免疫療法での前治療歴を有するKRAS G12C変異陽性患者を対象に、アダグラシブとドセタキセルの有効性および安全性を比較した。KRYSTAL-12試験は、22か国230施設で実施された無作為化多施設共同オープンラベル第3相試験である。KRAS G12C変異を有する進行非小細胞肺癌患者で、プラチナ製剤ベース化学療法および抗PD-1/PD-L1療法の両方を治療済みの患者を対象に、600mgアダグラシブ (1日2回経口投与)またはドセタキセル75mg/m²(3週間毎)のいずれかを投与する群に割り付けた。無作為化は地域(アジア太平洋地域以外 vs アジア太平洋地域)および前治療(化学療法または免疫療法の逐次併用 vs 同時併用)により層別化を行った。治療は、病勢進行あるいは毒性、主治医患者判断、死亡のいずれかが生じるまで継続された。主要評価項目は、ITT集団における中央判定の無増悪生存期間である。安全性は全治療患者で評価された。2021年2月23日から2023年11月16日までに、453例の患者がアダグラシブ(301例[66%])またはドセタキセル(152例[34%])の投与群に無作為に割り付けられた。各群において、アダグラシブ投与群298例(99%)、ドセタキセル投与群140例(92%)が薬剤を投与された。ITT集団(追跡期間中央値7.2ヶ月[5.8-8.7])における 無増悪生存期間の中央値はアダグラシブ群で5.5ヶ月[4.5-6.7]、ドセタキセル群で3.8ヶ月[2.7-4.7]であった(ハザード比0.58 [0.45-0.76]; p<0.0001)。グレード3以上の治療関連有害事象は、アダグラシブ投与患者298例中140例(47%)、ドセタキセル投与患者140例中64例(46%)に出現した。治療関連死はアダグラシブ群で4例(1%)、ドセタキセル群で1例(1%)であった。アダグラシブは、既治療KRAS G12C変異陽性患者において、ドセタキセルと比較して無増悪生存期間の統計学的に有意な改善を示し、新たな毒性はなかった。

感想
先行するKRAS G12C阻害薬であるソトラシブと全く同じ試験デザインでされています。主要エンドポイントであるPFSは、ソトラシブが5.6ヵ月、ハザード比0.66、対するアダグラシブは5.5ヵ月、0.58でした。奏効率は28.1%対32%とほぼ同じ成績でした。頭蓋内活性など細かいところで差があるようにも見えますが、ほぼ同じ薬効と考えてよさそうです。
ソトラシブ vs アダグラシブの直接比較の第3相試験など考える向きもあるかも知れません。試験設定がほぼ同じCodeBreak200とKRYSTAL-12試験の患者背景(PSや喫煙など)を合わせて比較すれば良いのではないかと思います…と書いて、念のため検索してみると、ズバリそのものの報告がすでになされていました[Chopra D Adv.Ther2025 PMID:40542959]。それによると効果は同等で、脳転移のある患者でソトラシブが若干良好、安全性も良好と結論されています。ちなみにこれで使われているMAIC(Matching-Adjusted Indirect Comparison)の手法はRではWeightItパッケージで実装できます。
話がそれましたが、議論としてはどちらが優れているかではなく、他の薬剤との組み合わせ、治療ラインの格上げに話は移っているようです。