アテゾリズマブ単剤の効果はIL-8があまり動かないこと

Comprehensive serum biomarker analysis reveals IL-8 changes as the only predictor of the effectiveness of immune checkpoint inhibitors for patients with advanced non-small cell lung cancer.

Akamatsu H et al.
Lung Cancer. 2024 Epub 2024 Nov 9.
PMID:39571250.

Abs of abs
PD-L1発現は、不完全ながらPD-(L)1阻害剤の効果予測に広く用いられている。 これまで様々な血清バイオマーカーの利用が示唆されているが、サンプルサイズが限られていたり、多くの研究で単一のバイオマーカーに焦点が当てられているため、結論は得られていない。 今回はPD-L1阻害薬による治療を受けた進行非小細胞肺癌の大規模コホートにおいて、実臨床における予測能力を検討するために、多重血清バイオマーカーを分析した。J-TAIL試験のサブ研究として行われ、これは前治療歴のある進行非小細胞肺癌を対象としたアテゾリズマブ単剤療法の前向き観察研究である。 2019年4月から10月に日本の73施設から262人の患者が登録された。 血清検体はベースライン時とアテゾリズマブ2回目投与時に採取した。 51種類の血清サイトカイン、ケモカイン、成長因子、血管内皮成長因子の定量は、Luminexプラットフォームを用いて行った。ベースラインおよび2回目投与時のベースラインに対する倍数変化を、アテゾリズマブの有効性と関連させて検討した。評価した51のタンパク質のうち、ベースラインのIL-12値が高いこと、可溶性CD40リガンドの変化が高いこと、IL-8の変化が低いことが、奏効率と関連していた。 これらのうち、IL-8変化が少ないことのみがより良好な無増悪生存期間(PFS)と関連していた(調整ハザード比、1.98[1.45-2.70];P<0.01)。 多変量解析により、IL-8変化量の低下はORRとPFSの両方に対する独立した因子であることが示された。 IL-8変化率は好中球/リンパ球比とは無関係であり、両者が低い患者において持続的なPFSが観察された。今回の検討により、アテゾリズマブを投与された前治療歴のある進行非小細胞肺癌患者では、血清IL-8の変化率が低いほど予後が良好であることが明らかになった。

感想
血清マーカーでICIの効果予測ができれば患者選択に大きく役立ちます。今回は50余りのマーカーを「治療前」「前後差」をとって指標を見つけようとする研究です。結局出てきたのが投与前のIL-12、CD40の差分、IL-8の差分が奏効と関連、多変量で見るとIL-8の差が低いことが奏効率、PFSと独立して関与していたとする結果でした。IL-8は周知のとおり好中球走化因子ですので、NLRで見れてしまうと面白くありません。解析ではこれと関連があまり強くないことも示されていますが、同じIL-8が低い集団でも、NLR高低でPFSは層別化され、なかなかこのNLRが強いことを物語っています。意地悪に見れば、カットオフ点によって結果は変わってきそうです。この辺りは丁寧に考察されています。つまるところROC曲線でもAUC=0.6程度であり、形状もあまり良くありません。とは言えIL-8があまり動かないことは治療効果が高いことと関連することがほかの癌でも証明されており、関連は確実にありそうです。
患者の免疫能力としての評価は、IL-8が低くあまり動かないことで良いとしても、腫瘍側の評価も組み合わせると良いデータになりそうです。今回は実地のため難しいとのことでしたが、贅沢を言えば、PD-L1だけではなくTMB、他の候補となる変異なども含めて総力戦を日本人データで、しかも大きな症例数でやると非常に実地に役立つデータが得られそうです。一臨床医としては、有害事象にはだいぶ慣れてきましたが、特にICI単剤の効果予測はまったく当たらない印象です。人間の知性では無理であればAIの出番でしょうが、まだ見えていない大きなものがあるような気がします。