オシメルチニブ耐性、治療するほど多様化

Next-generation sequencing based mutation profiling reveals heterogeneity of clinical response and resistance to osimertinib.

Zhao J et al.
Lung Cancer. 2019 Nov 25. pii: S0169-5002(19)30702-0.
PMID:31839416

Abs of abs.
第3世代EGFR-TKIであるオシメルチニブは、 初回治療および第1/2世代EGFR-TKI後T790M陽性で耐性化したものに対して有効である。ただしオシメルチニブの奏効期間はまちまちである。これらの腫瘍について、ゲノム変化が臨床転帰および耐性メカニズムに影響を及ぼしているとの仮説を立てた。今回はオシメルチニブ耐性となった肺癌患者を対象に、後ろ向き多施設共同研究を実施した。ゲノムプロファイリングは、59から1021個の癌関連遺伝子をターゲットとした次世代シークエシングを使用した。既知の耐性変異と代替経路の活性化は44%に確認され多様性があった。新たな機能を獲得したCTNNB1変異は、今回の集団で多く見られた。他にV834L変異など新たな耐性メカニズムとして推定される変化が確認された。さらにTP53変異は、オシメルチニブの効果を減弱させることと関係が見られた。まとめると、オシメルチニブに対する耐性の不均一性は、患者間の違いだけでなく、その患者内でも多様性を持っていることが示された。

感想
オシメルチニブの耐性機序は精力的に研究されており、2018年の報告[Yang Z ClinCancerRes2018 PMID:29506987]を見るとC797が2割程度で最も多く、他L792、G796、L718などのEGFRシグナル系とMET、PIK3CAなど別系統の増幅、活性化が報告されています。またT790Mがあるものが半数というのもよく見られるデータです。変異には重複もあり、なかなか頻度は特定しにくいところがあります。今回の結果もだいたい一致する結果でした。TP53変異の共存により、治療期間短縮と関連することはすでに第一世代TKIで複数報告があり、特に目新しいわけではありません。また今回のデータではこれらの変異が重複している例が存在することが強調されています。例えばG797SとG797Gの共存、また同じG797S/G変異をエンコードしている遺伝子でも2つのタイプが確認されています。つまり同じ患者の中でも別々に耐性化したクローンが存在することが示唆されます。このように治療後は、多彩な遺伝子変異が出現しており単一の耐性機序を追い求めても限界があります。このような不均一性の高い腫瘍はどう対策したらよいのでしょうか。