Risk of Recurrent Interstitial Lung Disease From Osimertinib Versus Erlotinib Rechallenge After Symptomatic Osimertinib-Induced Interstitial Lung Disease.
Li MSC et al.
JTO Clin Res Rep. 2024 Feb 10;5(4)
PMID:38590729
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間質性肺疾患は、EGFR-TKIによる治療関連死の最も多い原因である。しかし有症状のオシメルチニブILDにおいて、オシメルチニブまたはエルロチニブなどの他のTKIによるリチャレンジのILDのリスクは不明である。今回はEGFR遺伝子変異陽性でオシメルチニブ治療を受けた913例のレトロスペクティブ研究で、ILDの特徴、ILD治療歴、その後の抗癌剤治療を見た。主要評価項目は、オシメルチニブあるいはエルロチニブ再治療によるILD再発率を比較することである。913例中、35例(3.8%)に有症状オシメルチニブILDが認められ、そのうちグレード2、3~4、5のILDはそれぞれ12例(34%)、15例(43%)、8例(23%)であった。ILDが回復した時点で、17人の患者がEGFR-TKIのリチャレンジを受け、8人がオシメルチニブ、9人がエルロチニブを投与された。ILDリスクは、オシメルチニブ再治療の方がエルロチニブより高かった(p=0.0498)。8人のうち、5人(63%)がオシメルチニブのリチャレンジでILDを再発し、そのうちの3人は致命的な転帰をたどった。一方、エルロチニブ治療を受けた患者9人中1人(11%)だけがILDを再発した。2回目のILD発生までの期間中央値は4.7(0.7-12)週であった。エルロチニブ再治療を受けた患者の治療失敗までの期間中央値は13.2ヵ月[8.6-15.0]であった。ILD再発リスクは、オシメルチニブ再治療の方がエルロチニブよりもかなり高かった。オシメルチニブの再治療は避けるべきであり、エルロチニブは症状のあるオシメルチニブ誘発性ILDの患者に考慮すべきである。
感想
EGFR遺伝子変異陽性肺癌に対する治療は、現状ではオシメルチニブ一択です。しかし日本人の肺臓炎の頻度の高さは大きな問題点です。ごく軽度のものも合わせて大体10%というのが定説ですが、ゲフィチニブでの苦い経験を身をもって知っている先生がベテラン層に多くおり、TKIによる肺臓炎には特別な思いがあります。ゲフィチニブほど激烈なケースは稀ですが、それでも肺臓炎の陰影を見たら、最低でも休薬すると思います。ただ大事に至らず抗腫瘍効果が認められる場合、他のTKIに変更するのか、様子を見ながら同じものを再投与するのかは悩ましい点です。今回は有症状ILD(つまりG2以上)を対象にし、オシメルチニブのILD発生率は3.8%、オシメルチニブ再投与で63%、エルロチニブで11%でした。しかし両群とも死亡例が出ています。結論としてはエルロチニブは安全そうに見えるが、オシメルチニブの再投与は避けるべきであるとしています。理由は不明ですが、オシメルチニブとゲフィチニブなど第1,2世代のTKIの肺臓炎は発症機序が異なるのでしょう。
私の経験でもオシメルチニブで肺臓炎を起こした人に対して、アファチニブに変更しても肺臓炎を起こしたことはないですし、心機能低下に対しても同じくアファチニブへのスイッチで再燃したことはありません。なお保険診療外ですが、おそらく血管新生阻害薬併用でも軽度のものは防げるのではないかと考えています。髄膜炎などやむを得ない場合にオシメルチニブ再投与を行った経験もありますが、幸いなことにまだ大事に至った経験はありません。ただこの問題はもう少し症例数を集めて検討する必要があります。