Combining Osimertinib With Chemotherapy in EGFR-Mutant NSCLC at Progression.
White MN, et al.
Clin Lung Cancer. 2021 May;22(3):201-209.
PMID: 33610453
Abs of abs.
オシメルチニブは、第3世代EGFR-TKIであり、EGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺癌患者の生存向上と中枢神経転移の転帰を改善した。しかしオシメルチニブと化学療法併用の有効性と安全性についてはほとんど知られていない。本研究は、3施設で行われた後ろ向き研究である。3次治療以降にオシメルチニブと化学療法を併用した患者を、レビューにより同定し、治療期間、全生存期間(OS)、中枢神経系転帰を含む有効性と安全性を評価した。44人が登録基準を満たした。治療期間中央値は、オシメルチニブとプラチナ製剤の2剤併用療法では6.1カ月[4.1-未達]、オシメルチニブと単剤化学療法では2.6カ月[1.8-4.8カ月]であった。オシメルチニブ+化学療法の開始からのOS中央値は10.4カ月[7.0-13.2]であった。オシメルチニブ+化学療法を開始した時点で、37人(84%)の患者に中枢神経系転移があり、このうち9人(24%)はオシメルチニブ+化学療法で中枢神経系の病勢が進行していた。8名(18%)が毒性のために化学療法を延期または減量した。内訳はEFの低下により1名(2%)でオシメルチニブ中止、2名(5%)が減量していた。本研究からオシメルチニブと化学療法の併用療法は安全であると考えられ、多レジメンでの治療後に進行した患者集団において、中枢神経系の良好な制御を示し、治療期間と生存率は過去の化学療法と同等であった。
感想
後ろ向きとは言え、日常臨床での重要テーマを扱っています。TKIで進行が見られた後に抗がん剤を上乗せする試験はIMPRESS試験[Soria JC LancetOncol2015 PMID:26159065]があり、予想に反して上乗せは悪いという結果に終わっています。ただ現実には脳転移がうまくTKIによりコントロールされ、他の部位が悪くなってきたがPSは保たれている、といったTKI継続+抗がん剤上乗せを検討したくなる場面は出てくるわけです。保険診療に縛られる実地臨床では、オシメルチニブを中止し抗がん剤を少し行い、脳転移が悪化するようならすぐオシメルチニブに戻るといった姑息な手段に出るしかありません。生存延長が期待できるのは初回からの上乗せ治療NEJ009[Hosomi Y JCO2020 PMID:31682542]ですが、使用薬剤がゲフィチニブであり、少し患者背景は違ってくるかもしれません。
併用薬として、プラチナ2剤併用はカルボプラチン+ペメトレキセド(n=24;55%)、プラチナ+ペメトレキセド+ベバシズマブ (n=2;5%)、
カルボプラチン+タキサン (n=2;5%)でした。単剤との併用はゲムシタビン(n=9;20%)、ペメトレキセド (n=6;4%)、ドセタキセル(n=5;11%)、イリノテカン (n=3;7%)、ビノレルビン (n=2;5%)、ナブパクリタキセル (n=2;5%)、ペメトレキセド+ベバシズマブ(n=1;2%)、ドセタキセル+ラムシルマブ (n=1;2%)でした。全体として主な毒性は血液で毒性ですが、実地で用量調整されているのかG3の貧血は9%、G3以上の血小板減少も5%でした。現実的には毒性も軽度であり、場面によっては検討してもよいのではないかと思いますが、地域によっては保険が通るのかどうかが一番の問題点となります。