カルチノイド術後の長期フォローアップと放射線被曝

Radiological follow-up in patients with resected pulmonary carcinoids: Should we reduce radiation exposure

Heijboer FWJ et al.
Lung Cancer. 2024 Nov17;198: Epub ahead of print.
PMID:39556979.

Abs of abs.
肺カルチノイド切除後の再発率は低い(約10%)。ただし晩期再発の危険性があるため、一般に長期の画像フォローが推奨されている。一方で若年者における放射線誘発癌のリスクと釣り合いを取る必要がある。ENETS、ESMO、およびCommNETs-NANETSガイドラインに従った画像フォローアップの頻度と手段を評価した。 ガイドラインごとの累積放射線被曝量とその後の生涯癌リスク上昇を、性および年齢に依存するリスク因子を用いて推定した。 肺カルチノイドを切除した成人のオランダがん登録(2003-2012年)のデータを参考として用いた。対象患者706例のうち、32例(4.5%)が18~30歳であった。 中央値127ヵ月の追跡の結果、診断時年齢が18-30歳の患者で再発を来した患者はいなかった。 これらの患者について、追跡調査による40歳時点での追加被曝線量は、ENETSガイドラインでは140-308mSv、ESMOガイドラインでは35-42mSvであった。 発癌性影響による死亡の追加リスクは、ENETSでは0.7%(男性30歳)から3.1%(女性18歳)、ESMOガイドラインでは0.2%(男性)から0.4%(女性)であった。本検討からカルチノイド切除後で再発リスクの低い若年患者に対して、放射線被曝とそれに伴う癌誘発リスクを減少させるために、個別化したより範囲を絞ったフォローアップを考える必要がある。 そのために予測バイオマーカーを使用することが正当化されるだろう。

感想
カルチノイドは、検診で結節が見つかり試験切除で判明するケースが多いように思います。10年以上での再発も稀に経験されるところです。そのため現場ではフォローアップをいつまで、XpかCTか、間隔は?と迷うことが多いです。今回各国のガイドラインの概要もまとめてあり参考になります。例えばESMOガイドラインによれば、非定型カルチノイドで最初の5年間は半年~1年毎、10年までは1~2年、その後は2~5年毎となっています。これらは年齢をあまり考慮していないため、発症の低いグループではもう少し緩めるべきではないかという疑問があります。小さいリスクを評価するのは非常に困難ですが、今回のデータは施設を変わることなく同じ施設で継続的に行われたようであり、線量の計算は正確であると書かれています。癌発症の追加リスクは表2にまとめられており、18歳男性でESMOガイドラインに従うと3.1%のリスク上昇、低いところでENETSガイドラインで30歳女性の0.2%といったところになります。ざっと見て若い男性では追加リスクが大きいのでフォローアップもほどほどにということになります。これらの観点は肺癌で言えばGGNや、術後フォローアップにも活かされるべきと思います。例えば低線量CTでの検診について、55歳未満で3回検診を受けると10万人当たり3~6人乳癌が増えるというデータもあるようです[Berrington de González A, J Med Screen2008 PMID:18927099]。一方でスクリーニングを減らすとどうしても発見が遅れるリスクが上がります。臨床試験で確認できるのが望ましいですが、患者に不利益を与えると曲解される可能性もあります。しかし特にCT台数の多い日本では研究に力を入れるべき分野かと思います。