デュルバルマブの実臨床データ、放射線肺臓炎は多く程度が重い

Real world data of durvalumab consolidation after chemoradiotherapy in stage III non-small-cell lung cancer.

Jung HA et al.
Lung Cancer. 2020 Aug;146:23-29.
PMID:32505077.

Abs of abs.
PACIFIC試験では、切除不能な局所進行非小細胞肺癌(LA-NSCLC)患者に対し、デュルバルマブ地固め療法が無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を延長することが示された。しかし、実臨床での切除不能なLA-NSCLC患者は、多様な腫瘍負荷と臨床背景を持つ不均一な集団であり、実地でデュルバルマブを使用した場合の有効性と安全性を検討することが重要である。今回は切除不能LA-NSCLCに対して化学放射線併用療法(CCRT)を受けた患者を対象に、デュルバルマブの効果と放射線性肺臓炎の発生率を単施設で検討した。55.3%の患者がPACIFIC試験の適格基準を満たしていなかった。それでも実際はデュルバルマブを受けていた。デュルバルマブによる治療は、PACIFIC試験の基準を満たさなかった患者のサブグループと同様、全集団においても良好なPFSと関連していた。しかし、放射線性肺臓炎はデュルバルマブ群でより多く発生し、特にCCRT後3-6ヵ月以内に発生していた。グレード3の放射線性肺臓炎の発生率は、デュバルマブ群で14.3%、観察群では2.5%であった。デュルバルマブ地固め療法は、実臨床でLA-NSCLC患者の良好なPFSと関連していた。デュルバルマブ治療の候補者の選択を慎重に行い、さらに放射線性肺臓炎に対する積極的なサーベイランスと管理が必要とされる。

感想
全部で60例程度のまとめです。同じ期間でデュルバルマブができたかどうかは背景に大きな偏りがあります。デュルバルマブをしなかった理由として、グレード2以上の肺臓炎、死亡、PS不良、PDなどが挙げられています。全体の解析でV20が35%未満で42.5%、35%以上で71.4%の肺臓炎発症率でした。グレード2以上とした場合15%対61.9%と定説どおりの結果でした。同じくグレード2以上が背景は違えども、デュルバルマブなしが20%、ありが50%と肺臓炎の割合は全体として増えています。今回肺臓炎発症までの時間も”radiation pneumonitis free survival”として計算しています。中央値はデュルバルマブなしで8.2ヶ月、ありで3.1ヶ月でした。実臨床でデュルバルマブを使うと数回投与したところで起こる印象であり、程度もきついように感じます。今回もそれを裏付ける結果でした。ここでのPFSとOSはかなり未成熟であり、背景も違うのであまり議論する意味はないかもしれません。