Pembrolizumab plus Chemotherapy in Metastatic Non-Small-Cell Lung Cancer.
Gandhi L
N Engl J Med. 2018 Apr 16. [Epub ahead of print]
PMID:29658856
Abs of abs.
分子標的治療のない進行した非小細胞肺癌(NSCLC)の治療第一選択は、プラチナベースの化学療法である。50%以上のPD-L1発現を有する患者では、ペムブロリズマブがこれにとって代わっている。第Ⅱ相試験でペムブロリズマブを化学療法に上乗せすると、化学療法単独よりも有意に高い奏効率とより長い無増悪生存期間が得られている。今回の二重盲検第Ⅲ相試験では未治療、EGFR/ALK転座のない転移性非扁平上皮癌患者616例をランダムに2:1に割付け、ペメトレキセド+プラチナ製剤にペムブロリズマブ200mgまたはプラセボのいずれかを3週毎、4サイクル投与し、その後ペムブロリズマブまたはプラセボを、合計35サイクルまでペメトレキセド維持療法に加えて投与した。プラセボ併用群については病勢進行が確認されれば、ペムブロリズマブ単剤投与へのクロスオーバーが認められた。プライマリーエンドポイントは、独立中央判定による全生存期間および無増悪生存期間であった。中央値にして10.5ヵ月後のフォローアップで、12ヶ月後の生存率は69.2%[64.1-73.8]であった。プラセボ併用群では49.4%[42.1-56.2]であった(ハザード比0.49[0.38-0.64]; P<0.001)。評価されたすべてのPD-L1カテゴリーにわたって全生存期間の改善が見られた。無増悪生存期間中央値はペムブロリズマブ併用群で8.8ヵ月[7.6-9.2]、プラセボ併用群で4.9ヵ月[4.7-5.5]であった(疾患の進行または死亡をイベントとしたハザード比0.52[0.43-0.64]; P<0.001)。グレード3以上の有害事象は、ペムブロリズマブ併用群で67.2%、プラセボ群で65.8%に発生した。本試験によりEGFR/ALK変異を伴わない未治療進行非小細胞肺癌患者では、ペメトレキセドおよびプラチナベース標準化学療法にペムブロリズマブ追加を行うことで、化学療法単独よりも有意に全生存期間および無増悪生存期間延長をもたらした。
感想
今後の医療の方向性を示す重要な結果です。まず本試験は「非扁平上皮非小細胞肺癌」である点を踏まえておく必要があります。結果として腺癌が96.1%でNOSが2.4%でした。背景のPD-L1染色は1-49%と50%以上が3割づつと、ほぼ一般臨床を反映しています。要約にあるように全体としてはペムブロリズマブ併用が優れているわけですが、さらにより良さそうな集団を見つけるためにサブグループ解析を見ていきます。全生存期間で、ハザード比0.49より良かったのは65歳未満、女性、PS=0、非喫煙者、脳転移あり、PD-L1=1%以上、50%以上、シスプラチン併用でした。無増悪生存期間でも、全体の0.52より良かったのは65歳未満、女性、非喫煙者、脳転移あり、PD-L1=1%以上、50%以上、シスプラチン併用と同じ傾向を示しています。脳転移例の予後が良かったのは偶然かもしれませんが、患者選択に参考になるかも知れません。毒性に関して、下痢と皮疹が併用群で多くみられて、血液毒性も強い傾向にあります。発熱性好中球減少(これは非血液毒性です)もペムブロリズマブ併用群で少し多くなっています。また腎毒性も強くなっています。免疫関連の有害事象として、甲状腺機能低下は併用群で6.7%、肺臓炎は4.4%、大腸炎2.2%に見られました。Discussionではこれらの毒性はあまり増えていないようなことが書かれていますが、無視できないと思います。そして次に必要な臨床試験はPD-L1=50%以上の集団において、コントロールをペムブロリズマブ単剤投与においた比較でしょう。初回治療におけるPD-L1=50%以上のペムブロリズマブ投与(KEYNOTE-024[Reck M NEJM2016 PMID:27718847])での1年生存率は70%程度で、今回のPD-L1=50%以上のサブグループ解析を目視してみると、打ち切りを考慮すれば70%は上回りそうです。今回の結果を受け今後、保険診療でペムブロリズマブと抗がん剤の併用が認められると、この治療法が標準治療となり一気に広がりそうです。私見ではありますが、現在でも免疫チェックポイント阻害薬の有害事象にかなり気を使っており、併用となるとさらに気を付けなくてはならないことが増え負担になりそうです。