喫煙者のEGFR遺伝子変異陽性にはベバシズマブ上乗せが効果的?

Addition of Bevacizumab to Erlotinib as First-Line Treatment of Patients With EGFR-Mutated Advanced Nonsquamous NSCLC: The BEVERLY Multicenter Randomized
Phase 3 Trial.

Piccirillo MC et al.
J Thorac Oncol. 2022 Jun 1:S1556-0864(22)00268-4.
PMID:35659580.

Abs of abs.
日本のJO25567試験において、エルロチニブにベバシズマブを追加することで、EGFR遺伝子変異陽性患者の無増悪生存期間(PFS)が延長したが、アジア以外ではよくわかっていない。BEVERLY試験は、同様の設定で行われたイタリアの多施設共同無作為第3相試験である。患者をエルロチニブ+ベバシズマブ併用群とエルロチニブ単独群に1:1で無作為に割り付けた。主治医評価のPFSと盲検化された独立中央判定によるPFSの両者を主要評価項目とした。ハザード比0.60とし検出力80%、両側αエラー0.05とし、160人中126イベントが必要とされた。2016年4月11日から2019年2月27日まで、計160人の患者をエルロチニブ+ベバシズマブ(80人)またはエルロチニブ単独(80人)に無作為に割り付けた。追跡期間中央値36.3カ月で、主治医評価のPFS中央値は、エルロチニブ+ベバシズマブ併用群で15.4カ月[12.2-18.6]、エルロチニブ単独群で9.6カ月[8.2-10.6]であった(ハザード比0.66[0.47-0.92] )。独立中央判定のPFSでも、この結果が確認された。喫煙習慣と治療効果の間に統計的に有意な相互作用が認められ(p=0.0323)、PFS延長は現在/過去の喫煙者においてのみ臨床的に有意であった。併用療法で高頻度に見られたのは、高血圧(グレード3以上:24% vs 5%)、皮疹(グレード3以上:31% vs 14%)、血栓塞栓症(グレード問わず:11% vs 4%)、タンパク尿(グレード問わず:23% vs 6%)であった。EGFR遺伝子変異陽性のイタリア人患者において、エルロチニブの初回治療にベバシズマブを追加することにより、PFSが延長していた。併用により毒性が増加したが、新たな問題点は見られなかった。

感想
同様の試験は複数行われており、PFSは伸びるがOSはあまり変わらないという結果で主要解析結果には新たな情報はありません。しかし見るべきところはFig4で、非喫煙者ではベバシズマブを追加してもPFS、OSとも利益はないが、喫煙者(現、過去とも)にはベバシズマブ追加の効果が大きいという点です。PFSはハザード比0.49: 8.8ヶ月対16.9ヶ月、OSはハザード比0.41: 19.7ヶ月対35.3ヶ月で大きく開いています。この理由としてTP53変異の共存を挙げています。喫煙とTP53との関係、あるいはTKIの耐性機序としてもTP53変異の報告はいくつも出ています。これらを第Ⅲ相試験のデータから支持するものとなります。結局は「喫煙者のEGFR遺伝子変異陽性にはTKIになにかひと手間かけないといけない」というわかりやすいストーリーを構築し販促に使われそうです。敢えて反論するならば、今回の試験で喫煙歴は層別化因子になっていませんし、PFSのハザード比より、OSのハザード比が小さいことは普通なく、特に生存期間が長いほどPFSで稼いだ延命効果はOSに反映しにくくなるはずです。ということはPFSはともかくOSは後治療の差によるものと考えるのが自然です。少し意地悪な見方をしましたが、複雑な事象をうまく説明できるとついつい信じてしまいがちです。果たして今回はどうでしょうか?