Real-world evidence for immunotherapy in the first line setting in small cell lung cancer
Shira Sagie et al.
lung Cancer 2022 Oct;172:136-141.
PMID:36087486
Abs of abs.
肺癌治療において過去10年間で大きな進歩があったが、小細胞肺癌ではわずかの進歩であり相変わらず予後不良である。臨床試験に基づき、最近2種類の免疫チェックポイント阻害剤が進展型小細胞肺癌において承認され、全生存期間中央値に中等度の改善が見られた。しかし実地においてのデータはわずかである。本研究では、実地における進展型小細胞肺癌における初回免疫療法の有効性を報告する。2017年10月から2021年7月の間にイスラエルの単一施設において、進展型小細胞肺癌に対して免疫療法を併用、または併用なしで化学療法を行った全患者を対象とした。102例のうち、54例(53%)が化学療法に加え免疫療法を受けていた。34.7%の患者がPS2~4であった。化学療法のみを受けた患者は、高齢で、肝転移が多く、PSが不良であった。全コホートにおいて、免疫療法を受けた患者は生存期間中央値が有意に長かった(353日対194日、ハザード比0.40、p<0.0001)。PSによる層別化後も、PS0/1群で生存期間が有意に長く(ハザード比0.43、p=0.0036)、PS2/3群でも生存期間が延長する傾向がみられた。多変量解析でも免疫療法の優位性が確認された(ハザード比=0.46、p=0.004)。今回の検討で、臨床実地における小細胞肺癌の免疫療法の有効性が示された。治療群の背景は異なるが、PS不良のようにランダム化試験に含まれない患者でも、免疫療法を追加することで利益が得られる可能性がありそうである。
感想
バイアスのかかった比較であり、一概に結論することはできませんが、まだ類似の研究がない以上実地データとして参考となるデータです。免疫療法を受けていない理由としては、「臨床判断として3剤に適さない」か倫理供給プログラムに間に合わないというところが44%あり、これが大きな要因です。症例数があれば傾向スコアマッチング(いずれ誰かが報告するでしょう)になるかと思います。最近の傾向として傾向マッチングの乱用には、まずいところも多いと思っていますがここでは取り上げません。
さて全体の生存ハザード比は0.40でした。単純比較では良さそうですが、もともと状態の良い人を選択しただけかもしれません。特にPS2/3群の比較で、免疫療法との差が開いておりここのデータが一番使えるところでしょう。Rのsurvminerで書いていますが、スライドの解像度が悪く少し残念です。PS不良例にどこまで免疫療法の上乗せの利益が見込めるかは重大な臨床テーマであり、PS不良の原因によっても議論されるべきことかと思います。私はまだPS不良例は免疫治療の利益がないと考えていますが、実地で繰り返し確認できるようであれば投与を考えます。