Clinical features and outcomes of pulmonary lymphoma: A single center experience of 180 cases.
Zhang MC et al.
Lung Cancer. 2019 Jun;132:39-44.
PMID:31097092
Abs of abs.
肺リンパ腫は主に肺から発生する。これは極めて少ないか、または二次的にリンパ腫が関与している。これらの臨床背景、治療方法や予後因子は明らかではない。今回は2003年-2017年に1施設で治療を受けた原発性肺リンパ腫(PPL)63例、および2次性肺リンパ腫(SPL)117例を後ろ向き解析した。MALTがPPLの最も一般的な病理学的サブタイプ(67%)であり、2次性リンパ腫ではDLBCL(48%)が最も一般的なサブタイプであった。PPLと比較して、SPL患者見られたのは、B症状、より病期が進行している状態、IPIおよびNCCN-IPIの中等度または高リスク、炎症性マーカーの上昇、サイトカイン上昇であった。画像において、PPLでは浸潤影が最もよく見られる所見であり、SPLでは結節影が最もよく見られた所見であった。追跡期間中央値35ヵ月[2-176]で、3年生存率は低悪性度PPLで95%、低悪性度SPLで100%、中悪性度PPLで70%、中悪性度SPLで50%であった。今回低悪性度リンパ腫では予後因子はどれも生存に有意な影響をもたらさなかった。その一方で中悪性度肺リンパ腫において、単変量解析では、NCCN-IPIがPPLのOSと関連が見られた。多変量解析では、β2-MGがSPLでのOSの独立した予後因子であることが示された。今回の結果から、原発性および2次性肺リンパ腫では、臨床的な特徴および予後が異なっていた。さらに中悪性度SPLにおいてはβ2-MGがOSの独立した予後因子となっていた。
感想
ごくまれに遭遇する肺のリンパ腫についてのまとめです。特に浸潤影を取ってくる場合の鑑別診断として重要です。肺炎として治療してみたが治らない、器質化肺炎と思っていたが広がってくるといったことで紹介されてくるケースがあります。古典的BACが多いですが、なかにはこのようなリンパ腫もあり細胞診だけでなく、組織検査もすることが必要です。本文で言う原発性肺リンパ腫とは、病変が肺に限局されているものであり、2次性とは全身のリンパ腫のうち肺病変のあるものを指しています。肺原発の半数は早期(1-2期)、8割がLDH正常、36%が無症状でした。MALTが多いですが、6割が多発、5割が両側性でした。浸潤影の形を取るものが58%、気管支拡張も15%に伴っており12%はびまん性間質性肺疾患の形をとっていました。縦隔肺門のリンパ節腫脹も36%に見られ画像だけでは、BACやびまん性肺疾患と見分けがつきにくいことが伺われます。肺原発のDLBCLも、腫瘍陰影は4割で、浸潤影3割、多発結節24%となかなか鑑別が難しそうです。2次性であっても、25%が浸潤影の形で見られています。代表例として挙げられているFig1は、感染らしくなければ、おそらくBACあるいは器質化肺炎を考えるでしょうし、Fig3はNSIPあるいは誤嚥性肺炎を繰り返しているのではないかと考えると思います。血液検査も特に原発性リンパ腫では手掛かりに乏しく、LDHが中央値で144、β2MGが1992、IL2Rも1012とあまり高くはありません。原発と2次性との比較では、2次性の方がこれらのマーカーは高いですが、当たり前といえば当たり前であまり役には立たないでしょう。繰り返しになりますが、熱のない浸潤影を見た場合、BACとかCOPだけを考えるのではなく、リンパ腫も鑑別に入れることが必要でしょう。単に経過観察するのではなく、意識してB症状を聞いてみたり、IL2Rやβ2MGを測定することも少しは頭に置いておく必要があります。古くからの教え通り、どんな形でもあり得るのが癌、結核、リンパ腫なのですから。