肺癌の生存率の長期トレンド

Lung cancer survival trends and prognostic factors: A 26-year population-based study in Girona Province, Spain.

Teixidor-Vilà E et al.
Lung Cancer. 2024 Nov;197:107995 Epub 2024 Oct 20.
PMID:39447337.

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肺癌は、歴史的に生存率が低くヨーロッパにおける癌関連死亡の主因となっている。 本研究は、スペインのジローナ地方における26年間の生存傾向を分析し、主要な予後因子を同定した。 1994年から2019年の間に収集された集団ベースの研究で、2021年12月31日まで追跡した。 解析因子は診断日、性別、年齢、組織型、腫瘍病期(2010年以降)とした。 診断日は3つの期間(1994~2002年、2003~2011年、2012~2019年)に分割した。 多変量可変パラメトリックモデルを用い、年齢を非線形の時間依存共変量として組み入れ、純生存期間(NS)および傾向を解析した。 生存率の年次絶対変化(AAC_S)は3年NSを用いて算出した。9113例を解析した結果、最初期と最終期の間でNSの改善が認められた(7.1ヵ月[6.5-7.6]→8.5ヵ月[7.9-9.1])。 扁平上皮癌はAAC_Sが0.32%[0.21-0.43]と最も大きな改善を示したが、非小細胞肺癌(NOS)の生存率は低下した(AAC_Sは-0.19%[-0.26to-0.12])。 3642例(2010~2019年)の予後解析では、腺癌および扁平上皮癌の死亡リスクは、NOSと比較して低いことが示された(ハザード比0.52および0.62)。 腫瘍病期の進行は、死亡リスクの増加と相関した(Ⅱ期、Ⅲ期、Ⅳ期では、I期に比べてそれぞれ1.8倍、4.0倍、10.1倍に増加)。今回の結果から肺癌生存率は、特に扁平上皮癌で著明に改善した。 生存率は、性別、年齢、診断日、腫瘍組織型、特に病期によって影響され、包括的なデータ収集の重要性が示唆される。

感想
肺癌の予後が伸びているとよく聞きます。原因として治療の改善、早期診断などが挙げられていますが、地域単位での大きなデータでの報告はあまりありません。一方で高齢化もよく聞きます。高齢化しているのに予後改善は相反するようにも思えます。今回のデータはこの4半世紀での全体改善の確認と、組織型で見るとNOSでは確認できないことを示しています。ステージは現在でも予後を層別化できており有用であることも示してます。ただ予後の改善の理由が具体的に何か?という点では決め手に欠いており、女性が増えたことくらいしか言えません。性別が真の原因かもまた難しく、さまざま因子が絡むため結論までは踏み込めません。この論文の価値はFig2と3にあり、多くの組織型で右肩上がりに予後が伸びていることをデータで示した点にあります。最終が2018年ですので、治療の進歩を考えるとさらに現在進行形であることが推察されます。個人的には原因として、1994年→2020年で3年生存率にして8%程度の改善であり、主因はやはり薬物治療の進歩ではないかと考えます。