肺肉腫様癌に対する初回治療は?

Efficacy of first-line treatments for advanced pulmonary sarcomatoid carcinomas: a real-world analysis.

Amrane K
ESMO Open. 2025 Jul 23;10(8):Epub ahead of print.
PMID:40706224

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進行性非小細胞肺癌の進行の早い亜型のうち、肺肉腫様癌(PSC)は稀でよくわかっていな腫瘍である。本研究では、進行性PSC(APSC)に対する初回治療として、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)単独または化学療法(ChT)併用とChT単独の有効性を評価することを目的とした。 フランスのデータベース(2015-2022年)を使用し、APSC患者の初回治療におけるICI ± ChTまたはChT単独の治療結果を分析し、重み付き傾向スコアを用いて間接的に比較した。未治療肺癌42219例中、229例(0.5%)がAPSCであった。161人(70.3%)が初回治療(43人がICI単独、24人がICI + ChT、94人がChT単独)を受けていた。年齢中央値は66歳、70.2%が男性、106人のうち69.8%がPS0/1、86.2%が喫煙者または元喫煙者であった。113/161(70.2%)に遺伝子検査が実施され、うち35.4%に異常が認められ、最も頻度が高かったのはKRAS変異(39.7%)であった。43.5%についてPD-L1測定がなされ、68.6%が50% 以上、8.6%が1%-49%、22.9%が1%未満であった。ICI±化学療法(ChT)群におけるPFS4.6ヶ月[2.1-8.2]とOS20.6ヶ月[10.3-32.4]であった。ChT単独療法を受けた患者では、それぞれ2.2ヶ月と6.8ヶ月であった。傾向スコア調整後では、ICI ± ChTはChT単独療法に比べて有意に長いPFS(ハザード比0.4[0.29-0.72]、P<0.001)およびOS(ハザード比0.46[0.28-0.74]、P=0.002)と関連していた。今回の実臨床の分析では、初回治療としてのICI±ChTがAPSCの予後を著しく改善していた。

感想
稀に遭遇する腫瘍です。非扁平上皮癌としてペメトレキセドベースの治療をするか、肉腫としてアドリアマイシン系を考慮するか画像も見ながら難しい選択迫られます。経験的には重喫煙者、比較的若年、軽度でない肺気腫合併が多いように思います。今回の対象は年齢中央値66歳、男性70.2%、PD-L1は高値が多く、KRASが多くなっていました。そのまま比べてもICI併用の方が明らかに抗がん剤単独よりPFS、OSとも良好で、傾向スコアマッチング後の比較ではむしろ差は開く傾向にあります。この分野では日本人の貢献も大きく、CBDCA+PAC+Bevacizumabの第Ⅱ相試験ではOSが11.2ヵ月とまずまずの結果を報告しています[Oizumi S IntJCO 2022 PMID:35092535]。また初回pembrolizumab/既治療nivolumab単剤投与で、奏効率68.2%と30.8%とこれもまずまずの成績を報告しています(NCCH1603/NCCH1703)。ではタキサン+ICI+血管新生阻害薬がベストではないかと考えるのですが、そのような症例報告も存在します(しかもPD-L1陰性)[Sawatari K RepMedCasRep2022 PMID:35059287]。いずれにせよICIの優位性は確実で肺肉腫様癌に対しては、積極的に使っていくのが正しそうです。