Pembrolizumab for Patients With Refractory or Relapsed Thymic Epithelial Tumor: An Open-Label Phase II Trial.
Cho J et al.
J Clin Oncol. 2018 Jun 15:[Epub ahead of print]
PMID: 29906252
Abs of abs.
プラチナベースの化学療法後に進行した胸腺上皮性腫瘍(TET)には、治療選択肢があまりない。今回はこのような患者へペムブロリズマブを投与する第Ⅱ相試験を行い、有効性と安全性を評価した。少なくとも1つ以上のプラチナベースの化学療法後に進行が見られ、組織学的にTETと確認されているものが適格となった。過去1年以内に治療を要する自己免疫疾患があるか、または重篤な自己免疫疾患の既往がある場合は除外した。患者はペムブロリズマブ200mgを3週毎に投与され、腫瘍の進行または許容できない毒性があるまで継続した。第一次評価項目である奏効率は、9週間ごとに主治医評価された。33人が登録され、うち26人が胸腺癌、7人が胸腺腫であった。7人の胸腺腫のうち、2人(28.6%[8.2-64.1])がPRとなり、5人(71.6%)がSDであった。26人の胸腺癌のうち、5人(19.2%[8.5-37.9])がPRを示し、14人(53.8%)がSDであった。無増悪生存期間の中央値は両サブタイプとも6.1ヵ月であった。グレードを問わずよく見られた有害事象は、呼吸困難(11;33.3%)、胸壁痛(10;30.3%)、食欲不振(7;21.2%)、および疲労(7; 21.2%)であった。胸腺癌7人中5人(71.4%)、胸腺腫26人中 4人(15.4%)にグレード3以上の免疫関連有害事象が報告されている。内訳は肝炎(4人;12.1%)、心筋炎(3人;9.1%)、重症筋無力症(2人; 6.1%)、甲状腺炎(1人;3.0%)、ANCA関連急速進行性糸球体腎炎(1;3.0%)、大腸炎(1;3.0%)、亜急性ミオクローヌス(1;3.0%)であった。本検討からペムブロリズマブは進行TET患者において有望な効果を示した。しかし自己免疫疾患の発生率が高いことを考えると、免疫関連の有害事象なしにペムブロリズマブから恩恵を受けることができる集団を特定するための研究が必要である。
感想
少し前のデータですが、胸腺腫瘍に対するPD-1抗体の成績です。同時期に40例対象の胸腺癌に対するスタディがあり[Giaccone G Lancet Oncol2018 PMID:29395863]共通性があるので比較しながら読み進めました。重要なポイントはただ一つで「胸腺腫瘍に免疫チェックポイント阻害薬を使うとirAEの頻度が高い」という事実です。はるか昔から現象論として胸腺腫と重症筋無力症の合併が知られており、胸腺の腫瘍化にはなんらかの免疫異常が背景になっていることが推察されます。
さて、もともとPD-L1発現は胸腺腫瘍では高い傾向にあり、日本から、22C3抗体での評価ではないものの胸腺癌の70%、胸腺腫の23%がPD-L1陽性と報告されています[Katsuya Y Lung Cancer2015 PMID:25799277]。今回もPD-L1>=50%が58.3%ありました。となればPD-1抗体への期待は高まります。肝心の奏効率は、結果として特に高くはなく、多くを占める胸腺癌で20%程度、既治療例での非小細胞肺癌と同等の結果となっていました。ただPFSにすると6.1ヶ月と少し長くなります。胸腺癌に関してのOSは14.5ヶ月でした(胸腺腫は未達)。
治療中止は24.2%がirAEによる中止でした。胸腺癌7人中5人(71.4%)、胸腺腫26人中 4人(15.4%)にグレード3以上のirAEが見られ、肝炎、心筋炎がそれぞれ10%程度ありました。胸腺腫と胸腺癌に分けて報告されているのでわかりにくく文章よりもTable3で確認した方が早いです。さらにirAEで治療中止した8例の詳細も載っています。8例中6例は初回あるいは2回目の投与後に起こっており、高用量ステロイド+免疫抑制剤で軽快しています。これらの事象を総括し、胸腺腫や自己免疫疾患の既往があるものでは投与を避けるべきだろうと述べています。この機序については参考となるような考察はなされていません。従って今のところ、胸腺腫瘍に免疫チェックポイント阻害薬を使うとirAEの頻度が高い、と認識しておくことが大切でしょう。