腎機能低下例に対するペメトレキセド

The Toxicity Profile of Pemetrexed in Non-Small Cell Lung Cancer Patients With Moderate Renal Impairment:A Retrospective Cohort Study.

Kicken MP. et al.
Clin Lung Cancer. 2025 Jun;26(4):324-330.
PMID:40263048.

Abs of abs,
ペメトレキセドは非小細胞肺癌の免疫化学療法における重要な薬剤である。しかし、腎障害のある患者では重篤な毒性リスクがあるため禁忌である。 腎機能障害は肺癌患者においてよく見られるため、有効な治療をやめるか、リスクを冒すかのジレンマに直面する。ペメトレキセドの毒性に関するリアルワールドのデータは、この判断に役立つかもしれない。 本研究の主要目的は、腎障害を有する患者におけるペメトレキセド治療の毒性プロファイルを記述することである。多施設共同後ろ向き研究は、2015年から2024年の間にオランダの9病院で実施された。対象は非小細胞肺癌と診断され、標準用量ペメトレキセドの投与を1サイクル以上受け、ベースラインのクレアチニンクリアランス(CrCL)が45mL/分未満であった患者である。データは、患者および治療の特徴、血液および非血液毒性発現率、治療中止、減量、治療関連の入院について検討した。44例の患者が組み入れられ、CrCL中央値は41.1mL/分(四分位[35.0-43.9])であった。 31例(70%)が4サイクルのペメトレキセド治療を終了できず、14例(45%)がペメトレキセド関連毒性により治療を中止した。 半数以上の患者(n=28; 64%)が治療関連毒性により入院した。 17例(39%)がグレード3-4の好中球減少と白血球減少を発症した。 消化管毒性グレード3-4は15例(34%)に発現した。中等度の腎障害患者に対するペメトレキセド治療は、高い頻度で血液学的毒性、入院、減量、治療中止と関連していた。今回の結果から、腎障害を有する非小細胞肺癌患者において安全なペメトレキセドベースの免疫化学療法の必要性が示唆される。

感想
周知のとおりペメトレキセドはCCr<45は臨床試験から除外されていたことから投与注意となっています。実際に腎機能低下例では血液毒性が増加しており、禁忌と考える医師が多いと思います。しかしCCrの多くは推定値であり、文献によってはeGFRで見ている症例(注:ペメトレキセドはCCrで見るのが基本です)もあり投与が微妙な症例も多く存在します。さらにCrの測定系の違い(Jaffe法と酵素法)で見ているものが少し違う、あるいはCCrの実測と推定値の違いなど意外に禁忌の線引きは本当に難しいです。今回はCcr40前後の症例に投与したケースの後ろ向き研究です。血液毒性や非血液毒性が頻発し、6割が入院、7割が4コースできなかったとのことで散々な結果です。しかしこれはペメトレキセド単剤ではなく、ほとんどがカルボプラチン+ペムブロリズマブとの併用での検討ですので、単剤の場合はもう少し緩いかもしれません。しかし毒性は閾値を超える時間で決まっているようで、シュミレーションによればeGFR20の人に対してはペメトレキセド20㎎で、やっと腎機能正常の1000㎎投与例と同じ血液毒性になるようで[Boosman RJ IntJcan2021 PMID:34181276]、2割減量などといったレベルではないようです。これまで何となくCcrが多少低くともeGFRがしっかりある人は良いのかと思っていましたが、論文を読む限りCCr<45症例には投与はやめておいた方が無難であると考えます。余談ですがeGFRはあくまでもCKDの判定に用いるもので、薬物投与に関しては添付文書で参考にしている指標で調整するのが基本です。