術前オシメルチニブ、化学療法上乗せでもMPRはほとんど変わらず

NeoADAURA Investigators. Neoadjuvant Osimertinib for Resectable EGFR-Mutated Non-Small-Cell Lung Cancer.

He J et al.
J Clin Oncol. 2025 Jun 2:Epub ahead of print.
PMID:40454705.

Abs of abs,
EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌の術後は、オシメルチニブの補助療法が標準治療である。ネオアジュバント治療は手術成績と長期予後を改善する可能性がある。今回の無作為化対照第3相試験では、切除可能なⅡ~ⅢB期EGFR遺伝子変異陽性肺癌を、ネオアジュバント療法としてオシメルチニブ(80mgを1日1回9週間以上)とプラチナ製剤併用化学療法(3週間ごとに3サイクル)を併用する群、オシメルチニブ単剤療法(9週間以上)群、プラセボとプラチナ併用化学療法(対照)群に無作為に割り付け(1:1:1)、その後外科切除を行った。 手術終了後、適格患者にはオシメルチニブの補助療法が行われた。主要評価項目は、major pathological response (MPR)であった。 無イベント生存期間(EFS)は副次評価項目とした。358例の患者がオシメルチニブ+化学療法群(121例)、オシメルチニブ単剤群(117例)、プラセボ+化学療法群(120例)に無作為に割り付けられた。オシメルチニブ+化学療法(MPR率26%)、オシメルチニブ単剤(25%)は、プラセボ+化学療法(2%)に対してMPR率の統計学的有意な改善を示し、オッズ比はそれぞれ19.82[4.60-85.33];p<0.0001)および19.28[1.71-217.39];p<0.0001)であった。 15%のデータ成熟度であるが、12ヵ月後のEFS率はオシメルチニブ+化学療法、オシメルチニブ単剤療法、プラセボ+化学療法でそれぞれ93%、95%、83%であった。ネオアジュバント期間のグレード3以上の有害事象は、オシメルチニブ+化学療法、オシメルチニブ単剤療法、プラセボ+化学療法でそれぞれ36%、13%、33%であった。安全性に関する新情報はなかった。切除可能なEGFR遺伝子変異を有するⅡ~ⅢB期において、化学療法を併用する、あるいはオシメルチニブ単剤のネオアジュバントは、化学療法単独と比較してMPR率を有意に改善した。

感想
いろいろと物議を醸している試験です。プライマリーエンドポイントがなぜEFSでなくMPRなのかは謎です。イントロを読む限りはICIによる術前治療の評価がMPRでその後に大きく差が出ることに引っ張られたようです。OSの代替のEFS、さらにその代替のMPRで、この論理を信じるのであれば、結果がすぐ出るという利点もあり、それはそれで良いと思います。さて肝心の抗がん剤+オシメルチニブでもほとんどMPRが変わらなかったことはどう解釈すれば良いのでしょうか。差はないと見るべきでしょうか。進行期のFLAURA2では、化学療法+オシメルチニブとオシメルチニブの奏効率は、83%対76%でした。進行期の長い化学療法を上乗せしても1割乗るかどうかで、今回の試験は期間も短いし、見ているものも同じではないのでMPRに関して1%の上乗せを持って「少しあるかも」と見ておくのが適切でしょう。症例数は少なく評価が難しいですが、EFSの結果も待ちたいところです。以前のP2試験[Blakely CM JCO2024 PMID:39028931](該当記事)でもMPRは14.8%と低く、オシメルチニブでは意外に顕微鏡レベルの見え方の効果は低いのかも知れません。
仮に今回の術前治療が認められるとしたら使いどころはどこになるのでしょうか。私は術後のオシメルチニブに関してはOSがたとえ変わらなかったとしても、中枢神経系の制御に大きな意味があると思っています(該当記事)。であれば、その効果は短い術前より術後投与の関与が大きくなります。術後は必須として、短い術前を入れる対象としては、微妙なmulti-N2や、わずかな胸水、炎症ともとれる小粒状影など悩ましい症例になって来るのではないかと思っています。