術前治療における奏効はOSのサロゲートになるか?

Evaluation of Major Pathologic Response and Pathologic Complete Response as Surrogate End Points for Survival in Randomized Controlled Trials of Neoadjuvant Immune Checkpoint Blockade in Resectable in NSCLC.

Hines JB et al.
J Thorac Oncol. 2024 Jul;19(7):1108-1116.
PMID: 38461929.

Abs of abs.
切除可能な非小細胞肺癌に対する術前治療の臨床試験において、病理学的完全奏効(pCR)と大部分奏効(MPR)が無再発生存(EFS)と全生存期間(OS)の代替エンドポイントになるかどうかは論争中である。2017年6月から2023年10月31日までにPubMedおよび国際学会抄録のアーカイブを検索し、免疫チェックポイント阻害薬単独または化学療法との併用による術前治療群を組み込んだ研究を対象とした。なおpCR、MPR、EFS、OSに関する情報がないものは除外した。 試験による代替性については、pCRとMPRの対数OR、EFSとOSの対数ハザード比をサンプルサイズで重み付けした線形回帰モデルを用いて解析した。 回帰係数および95%信頼区間付きR2乗値は、ブートストラップ法により算出した。7件のランダム化試験が同定され、2385人が対象となった。 患者レベルでは、pCRおよびMPRと2年EFSとのR2乗値は、それぞれ0.82(0.66-0.94)および0.81(0.63-0.93)であった。 奏効別の2年EFS率のORはそれぞれ0.12(0.07-0.19)、0.11(0.05-0.22)であった。 2年OSについては、pCRとMPRのR2はそれぞれ0.55(0.09-0.98)と0.52(0.10-0.96)であった。 臨床試験レベルでは、奏効のORとEFSのHRのR2は、それぞれ0.58(0.00-0.97)と0.61(0.00-0.97)であった。 本解析により、pCRおよびMPRと2年EFSとの間に強固な相関が認められたが、OSとの相関は認められなかった。 試験レベルの代替性は中程度であったが、不正確であった。 より成熟したフォローアップデータや試験間クロスオーバーの影響を評価することが必要である。

感想
術前治療の奏効度合いとEFSは強く関連するが、2年OSとは微妙という結果です。真のエンドポイントをOSとするならば、PFSやEFSは代替エンドポイントと一応考えられます。一応というのはこの問題は決着していないのと、経過の長い悪性腫瘍ではすでにOSを追うことが不可能になっているからです。現実的な問題としてPFSやEFSが、プライマリーエンドポイントとして試験が行われますが、今でもOSを確認しないと判断が下せないと考える意見の方が多いと感じます。術前治療では手術検体が必ずあるため、pCRかMPRかの判断が付きます。それに応じて術後治療を選択する方向性もあります。今回のメタ解析では試験数が7と少なく、また細かいドライバー変異の存在が考慮されていないこと、手術は国によって微妙に異なることもあり、もう少し試験数を増やして判断する必要があると思います。そして何より2年OSで良いのかという問題が大きいです。術前治療を行い手術した症例なら5年以上の長期生存と相関するかどうかも知りたいところです。それでも何となくpCRとMPRが高い方がOSも良さそうです。少なくとも悪くはなく相関係数(=R2平方根)にすればsqrt(0.55)=0.72..です。つまり回帰モデルの当てはまりはあまり良くないが、相関関係はある程度あるということになります。