複合免疫療法後のマルチターゲットTKI+ICIはあまり効かない

CONTACT-01: A Randomized Phase III Trial of Atezolizumab +Cabozantinib Versus Docetaxel for Metastatic Non-Small Cell Lung Cancer After a Checkpoint Inhibitor and Chemotherapy.

Neal J et al.
J Clin Oncol. 2024 Jul10;42(20):2393-2403.
PMID:38552197

Abs of abs.
チェックポイント阻害薬は非小細胞肺癌の1次治療を改善したが、抗PD-L1/PD-1免疫療法が奏効しない、または病勢進行後に対する治療ニーズがある。 CONTACT-01試験では、抗PD-L1/PD-1療法とプラチナ製剤を含む化学療法を同時または連続投与した後に病勢進行した患者を対象に、アテゾリズマブとカボザンチニブの併用療法とドセタキセルを比較検討した。 方法: この多施設共同非盲検第Ⅲ相試験は、アテゾリズマブ1,200mgを3週に1回静脈内投与(q3w)+カボザンチニブ40mgを1日1回経口投与する群、またはドセタキセル75mg/m2を3週に1回投与する群に患者を1:1に無作為に割り付けた。 主要評価項目は全生存期間であった。患者186人にアテゾリズマブ+カボザンチニブ、180人にドセタキセルが割り付けられた。 最小OS追跡期間は10.9ヵ月であった。 OS中央値は、アテゾリズマブ+カボザンチニブ群で10.7ヵ月[8.8~12.3]、ドセタキセル群で10.5ヵ月[8.6~13.0]であった(層別化ハザード比0.88[0.68~1.16];P=0.3668)。 無増悪生存期間中央値はそれぞれ4.6ヵ月[4.1~5.6ヵ月]および4.0ヵ月[3.1~4.4ヵ月]であった(層別化ハザード比0.74[0.59~0.92])。 重篤な有害事象(AE)はアテゾリズマブ+カボザンチニブ群71例(38.4%)、ドセタキセル群58例(34.7%)に発現した。 グレード3/4の治療関連有害事象は、アテゾリズマブ+カボザンチニブ投与群73例(39.5%)、ドセタキセル投与群58例(34.7%)に発現した。 グレード5のAEはアテゾリズマブ+カボザンチニブ群、ドセタキセル群でそれぞれ14例(7.6%)および10例(6.0%)に発現した(治療関連はそれぞれ4例[2.2%]および1例[0.6%])。 結論 転移性非小細胞肺癌に対する抗PD-L1/PD-1免疫療法およびプラチナ製剤を含む化学療法後の病勢進行後のアテゾリズマブ+カボザンチニブは、ドセタキセルと比較してOSを改善しなかった。 安全性は既知のものと一致していた。

感想
癌に関する様々な遺伝子変異が明らかになるにつれ、それをターゲットとした治療の方が理にかなっているように思えます。しかしEGFR/ALKなどの華々しい成功例はあるものの、その方向性だけではないと感じさせる結果です。現在複合免疫療法は、ドライバー変異のないものを中心に導入されます。それが効かなくなった後、絨毯爆撃のような殺細胞性抗癌剤よりも、マルチターゲットTKIと免疫療法を併用するアイデアはスマートに見えます。今回採用されたカボザンチニブはVEGFR2、MET、RETなど複数の受容体チロシンキナーゼと、腫瘍微小環境に関連するTAMファミリーキナーゼ:TYRO3、AXL、MERの強力な阻害薬となっています。実験レベルではICIとの相乗効果も確認されています。試験設定を見ると、全生存期間でハザード比0.64の仮説、検出率90%とかなりの自信を持って証明しようとしたことが伺われます。なお後出しで恐縮ですが、ハザード比0.64はKEYNOTE-407のハザード比に相当します。しかもセカンドラインのOSで出そうとしたらよほど劇的に効かないと難しいと思います。結果はネガティブでハザード比0.88でした。しかも8か月付近までは、試験治療が下回り、13ヵ月付近からようやく開いてくるという形をしています。サブグループではPD-L1高発現(50%以上)でもあまり良くなく、女性も良くありませんでした。PFSは試験治療群が一貫して上回りハザード比は0.74でした。奏効率は11.8%対13.3%で、2次治療としては平凡です。有害事象も多く治療関連死も少なくないです。同じような試験でシトラバチニブとニボルマブの併用とドセタキセルを比較する第Ⅲ相試験(SAPPHIRE試験)[Borghaei H AnnOncol2024 PMID:37866811]も行われています。こちらはOSハザード比0.86[0.70-1.05]で、見た目では試験治療が上回っていますが、PFSは見た目で下回っています。症例数によってはP<0.05も可能であったかも知れませんが、OS改善の証明はできませんでした。論文化されていませんが、レンバチニブ+ペムブロリズマブとドセタキセルとの比較第Ⅲ相試験(LEAP-008試験)が行われています。これも差がなくネガティブでした。おそらくは複合免疫療法後のマルチターゲットTKIとICIの組み合わせはあまり効果がなく、まだ可能性を残すのがVEGFモノクローナル抗体との組み合わせでしょう。