進展型小細胞肺癌に対するアテゾリズマブ+ルルビネクテジン維持療法

Efficacy and safety of first-line maintenance therapy with lurbinectedin plus atezolizumab in extensive-stage small-cell lung cancer (IMforte): a randomised, multicentre, open-label, phase 3 trial.

Paz-Ares L et al
Lancet. 2025 Jun 14;405(10495):2129-2143.
PMID:40473449.

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進展型小細胞肺癌(ES-SCLC)に対する免疫チェックポイント阻害薬+プラチナ製剤ベースの化学療法による初回治療は効果はあるものの、生存期間は依然として不良である。今回はアテゾリズマブ、カルボプラチン、エトポシドによる導入療法後に進行のないES-SCLC患者において、維持療法としてルルビネクテジンとアテゾリズマブの併用療法とアテゾリズマブ単独療法を比較することを目的とした。13カ国、96施設で無作為化非盲検第3相試験として行われた。対象は18歳以上の未治療のES-SCLC患者であり、まず21日間の導入療法(アテゾリズマブ、カルボプラチン、エトポシド)を4サイクル受けた。その後、病勢進行のない患者を、ルルビネクチン(3-2mg/m2;G-CSF予防投与あり)+アテゾリズマブ(1200mg)またはアテゾリズマブ(1200mg)単剤による維持療法を3週間ごとに投与する群に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、無作為化から維持期までの無増悪生存期間と全生存期間の2つである。有効性については、割り付けられた全患者を含む全解析セットで評価され、割り付けられた試験治療を受けたかどうかは問わなかった。 安全性は、ルルビネクチンまたはアテゾリズマブを少なくとも1回投与された全患者で評価され、投与された治療法に従って解析された。2021年11月17日から2024年1月11日の間に895人の患者が登録のためにスクリーニングされ、そのうち660人(74%)が導入期に登録された。 2022年5月24日から2024年4月30日の間に、660例中483例(73%)が維持相に登録され、ルルビネクチンとアテゾリズマブの併用療法(n=242)またはアテゾリズマブの併用療法(n=241)に無作為に割り付けられた。データカットオフ時(2024年7月29日)において、IRF無増悪生存期間はアテゾリズマブ群よりもルルビネクチンとアテゾリズマブの併用群で長く(層別化ハザード比0.54 [0.43-0.67]; p<0.0001)、全生存期間も同様であった(層別化ハザード比0.73 [0.57-0.95]; p=0.017)。 ルルビネクチン+アテゾリズマブ群242例中92例(38%)、アテゾリズマブ群240例中53例(22%)にグレード3-4の有害事象が認められた。ルルビネクチンとアテゾリズマブの併用群で最も多かったグレード3~4の有害事象は、貧血(242例中20例[8%])、好中球数減少(18例[7%])、血小板数減少(18例[7%])であり、アテゾリズマブ群で最も多かった有害事象は、低ナトリウム血症(240例中5例[2%])、呼吸困難(4例[2%])、肺炎(4例[2%])であった。 グレード5の有害事象は、ルルビネクテジン+アテゾリズマブ群では242例中12例(5%)に、アテゾリズマブ群では240例中6例(3%)に発現した。 骨髄抑制の発現率は、ルルビネクチンとアテゾリズマブの併用群でアテゾリズマブ群より高かった。 無増悪生存期間および全生存期間は、有害事象の発生率は高いものの、ES-SCLC患者においてルルビネクチンとアテゾリズマブの併用群でアテゾリズマブ群よりも長かった。 ルルビネクテジン+アテゾリズマブ併用療法は、この設定における一次維持療法の新規治療選択肢を示すものである。

感想
小細胞肺癌の治療進歩が続いています。ルルビネクテジンは再発小細胞肺癌に対して期待されている薬ですが、第Ⅲ相試験での証明はなく小規模な試験で有望とされました。薬が少ないためで、主に米国で承認を得ています。今回はメンテナンスのアテゾリズマブに上乗せした結果を見ています。実臨床でもICIのメンテナンスに入ってすぐに再発することが非常に多い印象で、何か足りない感じはします。本治療の効果を見ます。OSは交差することなく開いており、悪くありません。中央値で3ヵ月弱のOS延長ですが、PFSは後の方で開きが悪く、単に抗がん剤を早くいれただけなのかも知れません。形の上ではいわゆるtail plateauの上乗せはあまりなさそうですが、続報を待ちたいと思います。毒性については骨髄毒性があるためG-CSFの予防投与が認められています。試験群の治療関連死は5%あり、主として感染、心筋梗塞などで特殊なものが出ているわけではありません。循環器疾患のリスクと重なる疾患でもあり特に危険という印象ではないです。また免疫関連の有害事象が増えるかどうかも重要な関心事です。肝障害が全グレードで10%対6%とわずかに増え、肺臓炎も4%対2%で少し増えています。総じて忍容性はありそうです。今後承認されたとしても、実地で難しいのはタルラタマブとの関係性です。維持療法は初回のICIとの絡みで、完全に競合しますし、初回治療でタルラタマブ含まれるようになれば完全に変わってしまう可能性もあります。これらが直接比較のない形で乱立すると、治療選択がますます混乱することが予想されます。
最近肺癌全体の治療強度が上がっており、売ろうとする熱意はわかりますが、高齢者により強い治療を提案するメーカーの姿勢も問題かと思っています。そのような処方傾向のある医師を「積極的な先生」と呼ぶのにものすごく違和感を覚えています。