進行非小細胞肺癌の20年間での予後改善

Evolving treatments and prognosis in Stage IV non-small cell lung cancer: 20 years of progress of novel therapies.

Satoh H et al.
Lung Cancer. 2025 Feb 17;202:Epub ahead of print.
PMID:40020466.

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分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬などの薬物療法の進歩は、過去20年間にIV期非小細胞肺癌の治療に革命をもたらした。 しかし国によって薬剤承認スケジュールの違いがある。本研究では、全生存期間の傾向、患者背景、OSの改善と新薬の導入との関連を調査した。今回のレトロスペクティブ研究は、2001年から2021年までに日本の国立がん研究センター中央病院で治療を受けたIV期非小細胞肺癌患者を対象とした。登録データを用いて2555人の患者を同定し、2001~2005年(A群)、2006~2010年(B群)、2011~2015年(C群)、2016~2021年(D群)の4つの期間に分類した。ベースラインの特徴は比較的一貫していたが、D群では高齢患者(75歳以上)と脳転移を有する患者の割合が増加した。さらに、男女比は時間の経過とともに均衡が取れてきた。 特筆すべきは、EGFR遺伝子変異またはALK融合遺伝子陽性を有し、高齢のD群患者では、OSが有意に延長したことである。 解析の結果、OSは各期間において着実に、そして大幅に改善した(OS中央値: 結論: 本研究は、脳転移や高齢患者の増加にもかかわらず、Ⅳ期患者の生存期間が、特にこの6年間で顕著に改善したことを示している。 この所見は、生存成績の向上における新規治療法の重要な役割を示唆している。

感想
肺癌の予後が向上していることは、10年以上前から言われていますが、今回は2001年から5年ごとの生存を比較しています。簡潔に言うと、Ⅳ期の患者においては、ドライバー変異を持つ集団や高齢者の生存期間が徐々に延びています。この改善の理由は、過去5〜10年間における包括的ゲノムプロファイリングや免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の使用による進歩にあるとしています。最新のD群の生存期間中央値は25.5ヶ月であり、一方で免疫療法導入前のC群では16.4ヶ月でした。この差は免疫療法の恩恵によるものと考えられます。EGFR遺伝子変異陽性の患者に関しては、最新のD群での中央値は37.5ヶ月で、2006-2010年のB群では33.7ヶ月でした。EGFR-TKIも進歩していますが、その効果はこの期間では劇的と言えず、免疫療法の関与が少ないことも反映されています。また、初回治療が緩和ケア(BSC)になる割合は、A群で19.1%だったのに対し、D群では8.6%に減少しており、EGFR-TKIの治療を受ける患者の割合は12.1%から28.3%に増加しています。これは、従来は治療法がなかった患者もTKIによって救われていることを示しています。
今回の結果は、私が肺癌の治療を始めた時期と重なるため、非常に納得のいくデータです。2001年頃は、プラチナ系薬剤の2剤による入院治療が一般的で、退院後すぐに再発し、ドセタキセルで最後を迎える患者が多く見られました。またゲフィチニブの初期の期待と混乱を知らない世代が増えてきていることも若い先生と話をしていると時々実感します。