Randomized phase II study of Pemetrexed or Pemetrexed plus bevacizumab for elderly patients with previously untreated non-squamous non-small cell lung cancer: Results of the Lung Oncology Group in Kyushu (LOGIK1201).
Fukuda M et al.
Lung Cancer. 2019 Jun;132:1-8.
PMID:31097081
Abs of abs.
高齢者非扁平上皮非小細胞肺癌(NSqNSCLC)を対象に、ペメトレキセド(PEM)とPEM + ベバシズマブ(Bev)の無作為化第II相試験を行い、その有効性と安全性を評価した。適格基準はNSqNSCLC、未治療、ⅢBまたはⅣ期または術後再発、75歳以上、PS0-1、骨髄機能が保たれていることである。患者は無作為に1:1に、PEMまたはPEM+Bevの治療を受けるように割り付けられた。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)で、副次項目として、奏効率、全生存期間、毒性、および費用対効果とした。41人の患者が登録され、40人(各群20人)が評価可能であった。患者は男/女=23/17、年齢中央値78歳[75-83]、ⅢB/Ⅳ/術後再発=1/30/9、PS0/1=11/29で、すべての症例に腺癌が含まれていた。PEMおよびPEM+Bev群間におけるPFSに有意差はなく、それぞれ5.4ヶ月[3.0-7.4]と5.5ヶ月[3.6-9.9]か月であった(p=0.66)。奏効率はPEM+Bev群で有意に高いものの(15%対55%、p=0.0146)、全生存期間に有意差は見られなかった(16.0ヶ月対16.4ヶ月、p = 0.58)。有害事象(グレード3と4)はそれぞれ白血球減少症(10例と30例)、好中球減少症(20例と55例)、血小板減少症(5例と5例)が見られた。薬剤費はPEM+Bev群の方が高かった(中央値:1,522,008円対3,368,428円、p=0.01)が、治療関連死はなかった。PEMにBevを加えても、高齢NSqNSCLCの生存率は改善されなかった。PEM+Bevと比較して、PEM単剤療法は生存率において同様の効果、毒性の軽減がなされ、高齢の NSqNSCLC 患者においてより費用対効果が高かった。PEMの単剤療法は、75歳以上のNSqNSCLC患者に対する選択肢の1つかもしれない。
感想
本日現在、75歳以上の高齢者のⅣ期非小細胞肺癌(ドライバー変異陰性、PD-L1<50%)の標準治療は第三世代殺細胞性抗がん剤単剤です。ご存知のように一番エビデンスがあるのはドセタキセル単剤ですが、骨髄抑制、脱毛、浮腫、神経毒性などの点から、非扁平上皮癌ではペメトレキセド単剤を選択することも多いと思われます。「本日現在」と断ったのは来週からの米国臨床腫瘍学会でJCOG1210の結果が発表されるからで、これがどのような評価を受けるか定まっていないからです。さてドセタキセル単剤のPFS、OSは、JCOG0803では奏効率24.6%、PFS4.4ヶ月、OS14.8ヶ月でした[Abe T JCO2015 PMID:25584004]。今回の結果はペメトレキセド単剤で、PFS5.4ヶ月、OS16.0ヶ月ですので単純比較しても十分な結果です。肝心のベバシズマブ上乗せ群も5.5ヶ月、16.4ヶ月とほとんど変わらずでした。生存曲線を見るとPFSは完全に重なっているようにみえますが、OSは少し上を行っています。従来の試験ではベバシズマブを加えると奏効率とPFSが良くなるものの、OSはあまり変わらないことが繰り返されてきました。今回はPFSの改善傾向すら見られませんでした。この原因としてFig2で各群の縮小率とPFSとの関係を見ています。PRのライン(30%)に定規を当ててみると、ペメトレキセド+ベバシズマブ群で、これ以上縮小する例は確かに多いのですが、著明な縮小を見せている例はそれほど多くありません。つまり50%以上縮小する例がほとんどなく、ベバシズマブ追加で一般に見られる効果が十分引き出されないことが伺われます。メタアナリシスを持ち出すまでもなく、高齢者では、ベバシズマブ追加で生命予後が改善しないことが繰り返し示されています。しかしそれだけでなく、今回の結果から知れるのは、高齢者において気道狭窄解除などQOL改善を狙ってベバシズマブ追加を行ったとしても、思ったほど縮小効果が得られにくいということになります。この点がこの試験で一番評価されるべきポイントであると思います。仮に生命予後を改善しなくとも、著しく縮小するなら使いどころはありますが、それすら怪しいということになります。また費用も当然ながら2倍強余分にかかるということで散々です。
では高齢者にベバシズマブ追加をする意味は全くないのでしょうか。前述のように、今回のOSはわずかにベバシズマブ追加群が上を行っています。おそらく利益を受ける集団がいるはずです。しかし担当医もベバシズマブに当たっても耐えられそうな患者さんを選んで登録したはずです。ということは、まだ「bev fit」の症例が見分けられるだけの知見を私達が持ち合わせていないと言わざるを得ません。どちらかといえば保守的な私はまだ高齢者にベバシズマブを使う気にはあまりなれません。