Nivolumab plus Ipilimumab in Lung Cancer with a High Tumor Mutational Burden.
Hellmann MD et al.
N Engl J Med. 2018 Apr 16.[Epub ahead of print]
PMID: 29658845
Abs of abs.
ニボルマブとイピリムマブは、第Ⅰ相試験で非小細胞肺癌(NSCLC)に対し有望な結果であり、Tumor mutational burden(TMB)が有望なバイオマーカーとして注目されている。今回のオープンラベルマルチパート第Ⅲ相試験では、TMBが高い(メガベースあたり10個以上の変異)患者において、ニボルマブ+イピリムマブ併用とと化学療法との間で無増悪生存期間を比較した。未治療IV期または術後再発の非小細胞肺癌患者を登録し、PD-L1=1%以上の患者と、1%未満の患者をそれぞれニボルマブ+イピリムマブ、ニボルマブ単独療法、化学療法に1:1:1の比率で無作為に割り当てた。TMBは、FoundationOne CDxアッセイによって決定された。高TMBを有する患者の無増悪生存期間は、化学療法よりもニボルマブ+イピリムマブの方が有意に長かった。1年無増悪生存率は、ニボルマブ+イピリムマブ群で42.6%、化学療法群で13.2%であった。無増悪生存期間中央値は7.2ヶ月対5.5ヶ月(ハザード比0.58[0.41-0.81]; P<0.001)。奏効率は、ニボルマブ + イピリムマブで45.3%、化学療法で26.9%であった。化学療法と比較したニボルマブ+イピリムマブの利益は、概ねPD-L1発現レベルを超えて保持されていた。グレード3,4の有害事象はニボルマブ+イピリムマブで31.2%、化学療法で36.1%であった。今回の結果からPD-L1発現レベルにかかわらず、TMBが高い非小細胞肺癌患者では、初回投与のニボルマブ+イピリムマブが化学療法よりも有意に無増悪生存期間を延長した。この結果は、非小細胞肺癌におけるニボルマブとイピリムマブの利益と、患者選択のバイオマーカーとしてのTMBの役割を確認した。
感想
CheckMate227試験はPD-L1<1%、≧1%の集団をニボルマブ+イピリムマブ、ニボルマブ単剤、化学療法に割り付けた試験で、PD-L1<1%が550例、≧1%が1189例登録されています。途中、それまでの知見を参考に、プロトコール改訂を行っています。それが今回の論文の主旨で、高TMBの集団を取り出し、抗がん剤と比較されています。試験全体の構成はFig1を見るとわかりやすいです。まずニボルマブ+イピリムマブ群にPD-L1<1%として187例、≧1%として396例、抗がん剤にそれぞれ186例、397例割り付けられています。その中で高TMBとされたのは299例(ニボルマブ+イピリムマブ139例、抗がん剤160例)でした。単純計算で高TMBとなるのは25%程度と推測されますが、そもそもTMBが評価可能であったのは、1004/1739と6割程度であった点に注意が必要です。Table1に高TMBと評価された今回の解析対象の背景がまとめられています。それによるとPD-L1≧1%が7割を占め、PD-L1発現がある方がTMBが高いのかもしれません。しかし一般集団でPD-L1陰性4割、1-49%=3割、50%以上3割とすれば全く関係ないとも読めます。事実FigureS2にTMBとPD-L1発現のScatter plotが載っており、この両者が全く関係がないことがうかがい知れます。肝心の結果は高TMBのニボルマブ+イピリムマブが無増悪生存期間で大きく抗がん剤を上回っています。しかし4ヶ月くらいで曲線が交差し、手放しでは喜べません。他にPD-L1=1%、組織型で分けたサブグループ解析ありますが、すべて曲線は4ヶ月あたりで交差していました。別の問題としてTMBの程度と抗がん剤効果との関連も今ひとつよくわかっていません。今回は参考データとして低TMB(メガベースあたり10未満の変異)群の無増悪生存期間も載せられています(FigS4)。それによれば抗がん剤を投与された場合のPFSは5.5ヶ月で高TMBのそれと同じでした。この低TMB群では、ニボルマブ+イピリムマブのPFS曲線と抗がん剤のPFSは6ヶ月あたりと少し後の方で交差していますが、最終的に免疫療法が上回る点は同じでした。本来の趣旨ではないのかもしれませんが、一番期待できそうなPD-L1≧1%と高TMBを併せ持つ集団で比較すると(FigS6)ニボルマブ+イピリムマブとニボルマブ単剤は一年無増悪生存率が42%対29%で曲線がきれいに離れています。しかし、その両者に抗がん剤治療の曲線が交差しています。交差する点を目視するとニボルマブ+イピリムマブで4ヶ月、ニボルマブ単剤は6ヶ月くらいの点に読めます。後の方で交差するほど抗がん剤が少しはましであるということになります。この結果はどう考えればよいのでしょうか。免疫治療の確実なマーカーがあれば解決しますが、どうやらTMB、PD-L1とも限界のように思えます。私見ですが、TMB、PD-L1発現ともある程度手がかりにはなるが、大きな何かを見落としているような気がします。私は腫瘍側をいくら評価しても不十分で、残るは宿主側の免疫能力の評価ではないかと思っていますが、どうでしょうか?