Combined SCLCの起源はひとつか?

Combined Small Cell Carcinoma of the Lung: Is It a Single Entity?

Zhao X et al.
J Thorac Oncol. 2017 Oct 31. [Epub ahead of print]
PMID: 29101056

Abs of abs.
小細胞肺癌(SCLC)は肺癌の15%ー20%を占め、うちcombined SCLC(CSCLC)は2%-5%と言われる。これら様々な混合成分を含む小細胞肺癌の臨床的特徴および分子変化についてはほとんど知られていない。今回は2005年から2015年の間に切除された205例の小細胞肺癌を検討し、臨床背景および病理学的特徴を分析した。すべてのCSCLC症例は、組織および免疫染色にて確認されている。個々の成分については新規の自動システムを用いて顕微鏡的に切り出し、DNAを抽出し、標的エクソームシークエンシングを行った。170例の症例の中から、評価に耐える組織を有する10例のCSCLCが同定された。第二成分として扁平上皮癌が最も多かった(n=5)。臨床的特徴に関してCSCLCと純粋なSCLCとの間に有意差はなかった。経過観察期間の中央値は36ヶ月であった。純粋なSCLCおよびCSCLC患者の平均生存期間は、それぞれ58ヶ月および26ヶ月であった(p=0.030)。CSCLCの3例は、顕微鏡的切り出しおよびシークエンシングが可能であった。同定された体細胞突然変異のうち、75%が両方の成分に存在していた。1つの成分のみに出てたのは、15の遺伝子変異と6つの増幅変異であった。本研究から純粋なSCLCとCSCLCとの間に有意な臨床的または病理学的な相違はないことが知られた。CSCLCは、純粋なSCLCと比較し、全生存期間が短縮していた。CSCLCの組織は遺伝子的には高い一致を示したが、異なる遺伝子型も保持していた。これはCSCLCにおいてSCLCと共通の遺伝子変化がまずあり、その後に変化が獲得されることが示唆される。

感想
臨床的に時々遭遇するCombined SCLCですが、Ⅰ期SCLCとして手術、その後手術検体で判明するケースが多いように思います。これは手術の方が検体が大きくなるので、他の組織を発見する確率が上がるというバイアスもあるかと思われます。合併する組織型について、最近の報告を検索しますと、2報ありました。一つは97例を検討し、合併はLCNEC>Sq>Adの順でLCNEC成分のあるものが特に予後不良との報告です
[Zhang C J ThoracDis2017 PMID:28203418]。もう一つは22例を検討、Large>Sqの順で予後は見かけ上Combined SCLCの方が良いが、手術例が多く、非手術例では有意差なしとの報告です[Babakoohi S ClinLungCancer2013 PMID:23010092]。後者の論文には古くからのまとめが載っており、それによるとlargeとSqのcombineが多いようです。なお今回の報告ではSq>LCNEC>adの順でした。治療については肺癌学会ガイドラインには言及がなく、実地臨床では小細胞肺癌として行われることが多いようです。一見、combinedであれば非小細胞肺癌対象の薬剤も加えた方が良さそうにも思えます。しかし過去にcombined SCLCを対象にプラチナ+エトポシド+パクリタキセルとプラチナ+エトポシドの比較が後ろ向きにされ、わずかにPFSが良かったものの毒性が強かったため、3剤治療は”may not be preferred”とまとめられています[Li YY CancerBiolMed2015 PMID:26175927]。従って今のところはcombinedであってもSCLCの治療が標準と考えられます。
さて、この2つの組織型がどのような由来を持つかは興味あるところです。今回の結論は免疫組織染色などでは両者は区別される(だからcombineな訳ですが)が、遺伝学的には共通点が多く同一祖先である可能性が高いということです。小細胞肺癌の遺伝学的解析について最近の報告ではTP53変異、RB1変異の頻度が高いとされています。今回は正攻法で、SCLC成分、それ以外の成分に分けシークエンスを行っています。最終的にはわずか3例ではありますが、SCLCおよびNSCLCのコンポーネントの両方からシークエンスが成功しており、両者ともTP53変異が検出されており、また全突然変異のうち75%が両者に出現していました。つまり表現型は異なっても、遺伝学的に非常に似ており同じ細胞由来を支持することになります。表現型が違うのは、その後腫瘍の微小環境で分化が違ったのではないかとの仮説を提唱しています。以前にもご紹介したとおりEGFR遺伝子変異陽性例での小細胞肺癌への転化でもTP53やRB1は重視されており[Lee JK JCO2017 PMID:28498782]、今後TP53やRB1変異の重要性が高まる可能性があります。