Role of Consolidation Durvalumab in Patients With EGFR- and HER2-Mutant Unresectable Stage III NSCLC.
Hellyer JA et al.
J Thorac Oncol. 2021 May;16(5):868-872.
PMID:33539970.
Abs of abs
最近切除不能Ⅲ期非小細胞肺癌の治療でデュルバルマブの地固め治療が汎用されている。すべての患者がデュルバルマブの利益を受けられるわけではなく、効果予測因子の特定は困難である。2018年1月から2020年3月までに、根治的化学放射線療法の後に地固めとしてデュルバルマブを投与されたⅢ期非小細胞肺癌患者を後ろ向きに検討した。36名に地固めデュルバルマブ療法が行われた。これらの患者のうち、14人がERBBファミリー変異を有していた(EGFR 11人、ERBB2 3人)。ERBB2/EGFR変異の患者は非喫煙者が多い以外は、年齢、性別、PD-L1発現、前治療の化学療法の種類は両グループで同様であった。ERBB2/EGFRコホートの患者は、EGFR/ERBB2の野生型コホートと比較して、無再発生存期間が有意に短かった(7.5カ月対未到達、p=0.04)。ERBB2/EGFR変異型腫瘍の患者では、地固めデュルバルマブの効果は低いようである。今後は、前向きの評価により、ERBB2/EGFR変異型を有するⅢ期非小細胞肺癌に対する最適な治療法について考える必要がある。
感想
オシメルチニブを初めとしてTKI治療が進歩する中、EGFR遺伝子変異陽性のⅢ期に対して抗がん剤+放射線療法はそもそも有効なのでしょうか。デュルバルマブ以前の後ろ向き検討を集めたレビュー[Ochiai S J Radiat Res. 2016 PMID:27534790]によれば、奏効率、PFSにも野生型と比較し大差はないが、脳転移をはじめとした遠隔転移再発が多いことが知られています。免疫治療が効きにくいことも合わせ、腫瘍の振る舞いが根本的に違うことが想定されます。この理由はディスカッションにあるように腫瘍増殖がEGFRのアップレギュレーションに支配されていること、相対的にPD-L1経路による腫瘍免疫回避とは違うことが考えられます。またEGFR変異陽性の腫瘍では、腫瘍浸潤リンパ球が少なく、TMBも低いことも報告されており、Ⅳ期例で免疫療法の効果が上がらないことと同じ理由と考えられます。ただしそんなに簡単に割り切れないところも残っています。EGFR遺伝子変異陽性の中にもPD-L1高発現の集団も存在します。そのような症例にも免疫療法の価値はないのでしょうか。今回の研究でPD-L1≧1%の集団ではDFSが若干良さそうに見えます。現在私の施設ではⅢ期例にドライバー変異およびPD-L1を測定していません。その理由は保険上のものですが、治療は変わらないものの局所/遠隔と気を付ける再発ポイントが異なるのと、効果の期待という点で診療の参考になることが多いので正式に保険で認めていただきたいものです。