EGFR mutation subtypes and response to immune checkpoint blockade treatment in non-small cell lung cancer.
Hastings K et al.
Ann Oncol. 2019 May 14.[Epub ahead of print]
PMID:31086949
Abs of abs.
EGFR遺伝子変異がある腫瘍は免疫チェックポイント阻害薬に対して全体的に反応性が低いものの、反応することもある。このように反応する腫瘍についての背景はよくわかっていない。エールがんセンターなどで免疫チェックポイント阻害薬で治療したEGFR遺伝子変異陽性171例を匿名化した状態で臨床背景、分子生物学的情報を解析した。別に383人のEGFR遺伝子変異陽性肺癌についての情報も収集し、遺伝子変異と腫瘍変異負荷(TMB)とEGFR遺伝子変異部位との関連について検討した。EGFR遺伝子変異野生型212人と比較し19del変異のPD-(L)1阻害薬に対するアウトカムは悪がったが、L858Rに対しては同等であった。T790MとPD-L1発現の存在は奏効と生存に影響を与えていなかった。PD-L1発現はEGFR変異部位によって差は見られなかった。また19delではL858Rと比較して、喫煙歴は変わらないもののTMBが少なかった。本研究からEGFR遺伝子変異陽性例では免疫チェックポイント阻害薬に対する反応が悪いものの変異部位による差が見られる。EGFR遺伝子変異による差はPD-(L)1阻害薬による治療の確立に必要な情報となる可能性がある。
感想
米国の癌治療の有名病院の症例を集めて詳細に解析したデータです。EGFR遺伝子変異に対して免疫チェックポイント阻害薬を使用したのを171例集められており背景因子の考察が可能になっています。まず奏効率は19delが7%、L858Rが16%と全体的に低い中でも差が見られます。またPFSは1.6ヶ月対1.9ヶ月で、TMBもこの両者ではL858Rの方が高い状態にあります。同じグループからTMBが高いとTKIの効果が悪いことが先に報告されています[Offin M ClinCancerRes2019 PMID: 30045933]。TMBはG719、L861Q,20insについては個別に検討され、最も中央値が高いのはG719でした。G719はPFSも4.8ヶ月と、変異別ではもっとも良好でした。もっともG719の症例数は7例と非常に少ないので確定的ではありません。また類似の研究は日本からも報告されています[Yamada T Cancer Med2019 PMID: 30790471]。わずか27例ですが、Common mutationはUncommonより効きにくく、T790M陰性例の方がPFSが良好と同じような傾向を示しています。今回の研究でもなぜEGFR遺伝子変異陽性例が効きにくいのか、ということの直接的な説明にはなっていないような気がします。ただTKIが効きやすいことと免疫チェックポイント阻害薬が効きやすいことはどうやら対局に位置するようです。したがってEGFR遺伝子変異陽性例でも、TKIの効果が今一つの症例については、比較的早い段階でICIを考えていくということかと思います。