Prospective investigation of biomarker and resistance mechanism using longitudinal cell-free NGS in non-small cell lung cancer with EGFR exon 20 insertion treated with amivantamab.
Park GH et al.
Eur J Cancer. 2025 Jul 10;Epub ahead of print.
PMID:40651388.
Abs of abs,
EGFR ex20insにおいてEGFRとMETの二重抗体であるアミバンタマブに関する予測バイオマーカーと耐性機構の研究は少ない。今回はアミバンタマブ治療を受けた患者において、細胞遊離NGS(cf-NGS)を用いて分子プロファイルと臨床転帰との関係を調べた。PCRまたはNGSで確認されたEGFR ex20ins患者(n=30)から、アミバンタマブ治療中に前向きの縦断的収集を行った血漿サンプルを分析に用いた。分子プロファイリングには、Guardant OMNI研究用限定アッセイを使用した。25患者から62サンプルに対しcf-NGS解析を実施した。ベースラインのcfDNAベースNGS結果では、EGFR ex20ins変異アレル頻度(VAF)<1%の患者(n=11)は、VAF ≥1%の患者(n= 11)と比較して、奏効率(45.4%対35.7%)、臨床利益持続率(81.8%対21.4%)、無増悪生存期間 (16.5 vs 2.6ヶ月、ハザード比0.40、p <0.01)の優位性を示した。良く見られた共変異はTP53(n=14、56.0%)であるが、臨床転帰との関連性は認めなかった。一方、同時EGFR増幅(n=9、36.0%)は有意に短いPFS(11.1 vs 2.7ヶ月、ハザード比0.35、p<0.05)を示した。治療前治療中のペア分析では、EGFR ex20ins VAFのベースライン値と治療中の変化でPFSに有意差が認められた。さらにアミバンタマブに対する獲得耐性メカニズムを複数同定した。本研究により、ベースライン時のEGFR ex20ins VAFがアミバンタマブ治療で重要な指標であることが示された。さらに治療中のctDNA VAFの変化は、奏効と長期予後の重要な予測因子となっており、治療戦略の策定に役立つ可能性がある。
感想
長い間TKIが効かない変異としてのEGFR ex20insの治療は課題でした。アミバンタマブ+化学療法で一歩前進したことは周知のとおりですが、その耐性機序についてはほとんど情報がありませんでした。VAF(変異アレル頻度)は変異DNAの割合ですが、解析には腫瘍細胞の割合や、コピー増幅などもかかわるため厳密な判断は難しいところがあります。VAFのばらつきも0から70まであり、ヒストグラムを書いてみればわかりますが数値はデータとして扱いにくい分布になっています。それでもVAF<1%は奏効率、PFSとも良い傾向にありました。治療中のVAFの変化は1%未満→1%未満が良く、1%以上→1%未満、1%以上→1%以上の順でPFSが悪くなります。ベースラインの共変異はTP53 (n=14、56.0%)、 TERT (n=5、20.0%)、 ATM (n=5、20.0%)、 FLT3 (n=5、20.0%)、 RICTOR (n=5、20.0%)であり、MET増幅、MET変異も少数例見られています。TP53の有無でみたPFSは若干無しの方がよく見えますが、少数解析のため判断は難しいです。耐性機序については、EP300欠失、RTK/RAS/PI3K/AKT経路変化が5人(41.6%)、細胞周期遺伝子変化が5人(41.6%)、p53およびHippo/NOTCH経路の変化がそれぞれ5人(41.6%)、3人(25.0%)に見つかっています。これらは複合しており対策が難しいことを示しています。EP300はヒストンに関係するタンパク質をコードし、欠失により上皮間葉転換(EMT)に関与し細胞遊走能、浸潤能が上がり抗がん剤耐性に結びつきます。EGFRが変化するいわゆるオンターゲットの変化はP281Lが1例のみと少ないようです。今後の研究が待たれるものの、ex20insについてはもともと複雑であり、治療によりさらに複雑化し難敵であることが再認識されました。