Outcome of Patients with Non-Small Cell Lung Cancer and Brain Metastases Treated with Checkpoint Inhibitors.
Hendriks LEL et al.
J Thorac Oncol. 2019 Jul;14(7):1244-1254.
PMID: 30780002
Abs of abs.
非小細胞肺癌において脳転移はよく見られるが、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の臨床試験では除外されていることがある。今回は転移性脳腫瘍を有する患者でのアウトカムを評価した。ICIで治療された連続症例を対象に調査した。ICI治療前におけるアクティブな脳転移として、局所療法がされていない新規病変、あるいは増大傾向のあるものとした。奏効率、無増悪生存期間、全生存期間を見た上で、多変量解析を行った。1025人の患者が対象となり、ICI治療開始からの追跡期間中央値は15.8ヶ月であった。これらの患者のうち、225人(24.9%)に脳転移があり、うち39.2%はアクティブで、14.3%が有償上、27.4%がステロイド治療中であった。疾患別予後グレード評価(ds-GPA)スコアは94.5%についてわかっており、その内訳はスコア0-1が35.7%、スコア1.5-2.5が58.5%、スコア3が5.8%であった。脳転移のあるなしで奏効率は同じであり(あり20.6% なし22.7%)、頭蓋内奏効率は27.3%であった。無増悪生存期間中央値は1.7ヶ月[1.5-2.1]対2.1ヶ月[1.9-2.5]、脳転移ありのうち12.7%が、頭蓋内外でレスポンスが乖離し、2例(0.8%)は脳転移のpseudoprogressionを示した。アクティブな脳転移の方が、安定した脳転移より進行が見られた(54.2%対30%、p<0.001)。生存期間中央値は脳転移ありで8.6ヶ月、なしで11.4ヶ月であった。脳転移ありのグループでの多変量解析において、コルチコステロイド使用(ハザード比2.37)が全生存期間短縮と関連し、安定した脳転移(ハザード比0.62)、ds-GPA高値(ハザード比0.48-0.52)が生存期間改善と関連していた。本研究から、ICIで治療された非小細胞肺癌において、脳転移は予後不良と関連せず、コルチコステロイドを使用していない安定した脳転移と、ds-GPA良好は予後良好であった。
感想
ds-GPAは元文献[Sperduto PW IntRadiatOncolBiolPhys2010 PMID:19942357]のスコア分類(年齢、PS、転移部位、脳転移個数)が使用されていますが、現在はEGFR/ALKも加味した改良版(Lung-molGPA)[Sperduto PW JAMA Oncol2017 PMID:27892978]が出されており、これ使うのが適切と思われます。簡単に計算することができるhttp://brainmetgpa.comというサイトもあります。このLung-molGPAは年齢、PS,転移部位、脳転移個数、EGFR/ALK有無で成り立っており、元スコア分類と区切りも少し違っておりスコア幅は0-4点となっています。安定した脳転移よりも、進行性の脳転移の方が予後不良なのは当たり前で、免疫療法によりそれが緩やかになっているのかどうかの情報はなく、脳転移に対してICIの意味があるのかどうかの本質的な示唆は得られません。それでも本報告の脳転移の存在そのものよりも活動性が問題である点、ステロイド併用は好ましくない点、脳のpseudoprogressonが0.8%に見られた点は貴重な情報と言えます。なお脳病変の活動性評価での”stable”は局所治療され、ICI開始前6週間以上進行が見られないものと定義されています。未処置の脳病変はactiveに分類されています。頭蓋内奏効率が27.3%とは、効果が期待できると見ることもできますが、一方で頭蓋内外でレスポンスの乖離が12.7%に見られたことから、やはり脳病変はできるだけ事前に処置しておくのが良さそうです。私も日常臨床ではICIをする場合、効果に期待するよりも投与前に脳病変に対する局所療法を行っています。ただタイミングについてはアブスコパル効果もあり、検討の余地はあるかと思います。この数年間に局所療法についての議論がかなり進みました。それに従って治療の連携範囲も広がり、根治手術は減っても局所療法としての手術が増えていくだろうと思っています。