Disparity in clinical outcomes between pure and combined pulmonary large-cell neuroendocrine carcinoma: A multi-center retrospective study.
Zhang JT et al.
Lung Cancer. 2020 Jan;139:118-123.
PMID:31775086
Abs of abs.
2015年のWHO分類では、肺大細胞神経内分泌腫瘍(LCNEC)を高悪性度神経内分泌腫瘍と定義している。ただし、純粋なLCNECと混合型LCNECの背景因子と予後因子は不明である。そのため多施設レトロスペクティブ研究にてLCNECと混合型LCNECを比較した。2009年‐2016年の間に17の中国の施設のLCNEC患者381人からのデータを収集した。臨床背景と予後は、補助化学療法(n=56)および初回化学療法(n=146)受けている患者を分け、同様に小細胞肺癌(SCLC)のレジメンおよび非小細胞肺癌(NSCLC)のレジメンを受けているものに分けて検討した。神経内分泌マーカー(synaptophysion、chromogranin-A、CD56)の発現レベルは予後と関連していた。補助化学療法群の無増悪生存期間中央値は、NSCLCベースのレジメンよりもSCLCベースのレジメンの方が有意ではないものの長かった(P=0.112)。初回治療群では、無増悪生存期間中央値は、NSCLCベースのレジメンよりもSCLCベースのレジメンの方が有意に長かった(11.5ヶ月 vs 7.2ヶ月、P=0.003)。混合型LCNECで、複合成分として多かったのは腺癌で、70.0%を占めていた。全生存期間中央値は、有意ではないものの混合型LCNECが短かった(P = 0.083)。初回化学療法または術後補助化学療法のレジメン選択に際し、NSCLCレジメンよりSCLCレジメンの方が効果が高い。純粋なLCNECと混合型LCNECにおける生存期間の差を明らかにするには、さらなる研究が必要である。
感想
いわゆるLCNECは大細胞癌と名がつく通り、非小細胞肺癌と扱われています。しかし予後の悪さ、またNSEやproGRPが上昇する例もあり小細胞肺癌としての治療が行われることもあります。また今回のテーマのように混合型も多く臨床家を悩ませます。治療への試みとして日本からは44例(中央判定で30例のLCNEC)のCDDP+CPT11の試験が実施され奏効率46.7%、全生存期間12.6ヶ月と報告されています[Niho S JTO2013 PMID:23774385]。
今回は381人のデータでの後ろ向き研究です。LCNECではまず診断を揃える必要があります。細胞診中心では論外ですが、小サンプル131例、切除例250例とまずまずの背景と思います。著者らは当初純粋なLCNECと混合型の予後比較をしたかったようです。これについては簡単な生存曲線とP=0.083が載せられているだけです。この論文の一番大事な点は術後補助化学療法、初回治療ともにPFSにおいて、小細胞肺癌レジメンを使った方が成績が良いという点にあります。ではLCNECは分子生物学的には何者なのでしょうか。NGSで解析した論文[Rekhtman N ClinCancerRes2016 PMID:26960398]によれば、見つけられた変異としてTP53(78%), RB1(38%), STK11(33%), KEAP1 (31%), KRAS(22%)があり、SCLC-like、NSCLC-like、Cartinoid-likeの3パターンに分けられるようです。日本からも同様の報告[Miyoshi T ClinCancerRes2017 PMID:27507618]がされ、こちらはSCLCに近いと結論しています。大細胞癌はもともと雑多なものが混じりwaste basketsとも言われています。大細胞癌の一部としてのLCNECは、遺伝学的にも雑多であり、今回の結果も合わせると、他の組織型が混じると予後が悪くなるということでしょう。現実的に取れる対策として、LCNECはできるだけ小細胞肺癌としての治療を行うことでしょう。興味としては遺伝子パネルに提出し、SCLCあるいはNSCLCどちらの方向性か検討し治療効果を見てみたい気はします。