Tepotinib plus osimertinib in patients with EGFR-mutated non-small-cell lung cancer with MET amplification following progressionon first-line osimertinib (INSIGHT 2): a multicentre, open-label, phase 2 trial.
Wu YL et al.
Lancet Oncol. 2024 Aug;25(8):989-1002.
PMID:39089305.
Abs of abs.
EGFR遺伝子変異非小細胞肺癌において、初回治療のオシメルチニブへの耐性機序がMET増幅の場合、治療選択肢が少ない。今回は高選択的MET阻害剤であるテポチニブとオシメルチニブ併用療法を評価した第2相INSIGHT2試験の主解析を報告する。 非盲検第2相試験として17ヵ国で実施され、18歳以上PS0/1、オシメルチニブ初回治療で進行した後、組織生検でFISH;MET遺伝子コピー数5以上か、MET対CEP7比2以上、リキッドバイオプシー次世代シークエンシング(MET血漿遺伝子コピー数2~3以上)によりMET増幅が認められた患者が対象となった。 患者は、1日1回、テポチニブ500mgとオシメルチニブ80mgの経口投与を受けた。 主要評価項目は、テポチニブ+オシメルチニブによる治療を受け、追跡期間が9カ月以上ある中央判定FISH法によるMET増幅患者における奏効率である。 安全性は、試験薬を少なくとも1回投与された患者を対象として解析した。2020年2月13日から2022年11月4日の間に、128例の患者(女性74例[58%]、男性54例[42%])が登録され、テポチニブとオシメルチニブの併用療法が開始された。1次解析集団には、中央FISHによりMET増幅が確認され、オシメルチニブの初回治療歴があり、追跡期間が9カ月以上(中央値12-7カ月[9.9-20.3])の患者98人が含まれた。奏効率は50.0%([39.7-60.3];98例中49例)であった。 最も多くみられたグレード3以上の有害事象は、末梢浮腫(128例中6例[5%])、食思不振(5例[4%])、QT延長(5例[4%])、肺臓炎(4例[3%])であった。 重篤な治療関連有害事象は16例(13%)に報告され、4例(3%)が死亡した。内訳は肺臓炎(2例[2%])、血小板数減少(1例[1%])、呼吸不全(1例[1%])、呼吸困難(1例[1%])で試験薬に関連する可能性があると評価された;1例の死亡は肺臓炎と呼吸困難の両方に関係した。本試験によりテポチニブとオシメルチニブの併用療法は、EGFR遺伝子変異を有し、初回オシメルチニブ治療に対する耐性機序としてMET増幅が見られる場合において有望であり忍容性を示した。これは化学療法を避けながら経口薬の選択肢があることを示唆するものであり、さらなる検討が必要である。
感想
これまでEGFR-TKI耐性化例に、純粋な薬の上乗せはうまくいきませんでした。少し前になりますがIMPRESS試験[Soria JC Lancet Oncol2015PMID:26159065]という報告がありました。これはゲフィチニブPD後に抗がん剤を上乗せするものですが、PFSハザード比0.86でしたが、PFS中央値は同じ、奏効率もほぼ同じでした。これによりTKIのbeyondPD投与に根拠が与えられませんでした。この報告以降急速にbeyondPDの議論は消退、オリゴメタ対応で来ています。従って現在までのエビデンスベースで考えると、効果のなくなった薬をそのまま使い続けても生存に与える意味はありません。しかし今回その常識を覆す可能性のある結果でした。この雑誌が第Ⅱ相試験で採択している理由でもあります。試験ではまずオシメルチニブ耐性がMET経路に依存していそうな症例をピックアップしています。初めの方で少数行われたテポチニブ単独投与群(n=12)では、奏効率が8.3%とあまり良くありません。しかしその後併用療法に切り替えたところ3例がレスポンスしたとのことです。このように、ex14skipping以外のMET増幅に対するテポチニブの奏効率は非常に低く、まとまったデータがあまりありません。それがすでに効果を無くした薬剤と、ほとんど効かない薬の併用で半分効くとなれば画期的な成果です。オシメルチニブPD後となると、現在最も有力視されているのは、アミバンタマブ±ラゼルチニブ+化学療法で、METなどの選択をせずに行うと奏効率60%、PFSは6-8か月程度です[Passaro A AnnOncol2024 PMID:37879444]。アミバンタマブがEGFR-MET2重特異抗体であることを考えると、アミバンタマブ+ラゼルチニブの併用にも期待されますが、これはオシメルチニブ耐性に症例選択をせずに投与すると36%の奏効率と報告されています[Cho BC NatMed2023 PMID:37710001]。今回の結果から考えると、MET増幅に関しては、わざわざラゼルチニブに変えなくとも、オシメルチニブをそのまま使っても同じような結果が出るのではないかと思います。こうしてオシメルチニブPD後を議論しているうちに、初回治療のアミバンタマブ+ラゼルチニブの結果がPFS23.7ヵ月と報告されています[[Cho BC NEJM2024 PMID: 38924756]。これは次回取り上げます。いままでは難しいとされていた分子標的治療薬の組み合わせも徐々に進歩してきています。考え方は分子標的なので、理論があっているものは様々に試すべきことを示唆する報告と思います。