The modified Glasgow Prognostic Score (mGPS) can guide decisions for immunotherapy treatment beyond progression.
Saal J et al.
Eur J Cancer. 2025 Jan17
PMID:39662097.
Abs of abs,
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)による治療を受けた患者において、進行後に治療継続(TBP)することがよく見られる。しかしTBPの恩恵を受けやすい患者を選択するためのバイオマーカーは存在しない。本研究では、修正グラスゴー予後スコア(mGPS)がTBPの予測バイオマーカーとして有用であるかを検討した。免疫療法群を対象とした無作為化第3相試験「IMmotion151(腎細胞癌)」、「OAK(非小細胞肺癌)」、「IMvigor211(尿路上皮癌)」のデータを用いた事後解析を行った。主要評価項目は、mGPSリスク群における最初の主治医評価によるPD後の全生存期間(PPOS)とした。mGPSはCRPとアルブミンの値で算出し、患者を3つのリスク群に分類した。3つの試験すべてにおいて、PD時のmGPS(PD-mGPS)が強い予後予測因子であることが示された。PD-mGPSの高リスク群は、低リスク群と比較してPPOSが有意に短かった(腎細胞癌(RCC):死亡ハザード比18.3[6.71–50.0], p < 0.001)、尿路上皮癌(UC):ハザード比4.16[2.58–6.69], p<0.001)、非小細胞肺癌:ハザード比2.53[1.70–3.77], p<0.001))。重要なのは3つの試験すべてにおいて、ICI-TBPの恩恵を受けたのはPD-mGPSの低リスク群のみであり、他の治療への切り替えと比較して生存率が改善した(RCC:ハザード比0.18[0.06–0.55], p=0.002)、UC:ハザード比0.59[0.34–1.00], p=0.052)、非小細胞肺癌:ハザード比0.62[0.41–0.92], p=0.018))。これらの結果は画像上のPD時に測定されたmGPSにより、アテゾリズマブ継続で利益を得られる可能性のある患者を特定でき、臨床現場でのTBPを行うかの選択に役立つことを示唆している。
感想
免疫チェックポイント阻害薬を含んだ臨床試験では、画像上PDでも主治医が利益がある限り続けてもよいとする選択肢が選べる場合が多いです。それに従ってPD後そのまま治療された場合と、治療を変更した場合をmGPSの観点から層別化しています。余談ですが、modified GPSにはいくつかのバリエーションがあり、CRPのカットオフ値が違ったり、スコア1の定義が微妙に違うので臨床研究の際には引用元をきちんと確認する必要があります。
さて主たる結果はFig3になります。これを見るとLow-risk群に関しては、PD後も免疫療法継続の方が予後がよく見えます。考察にも書かれていますが、「臨床的利益がある」と考えるところに大きな選択バイアスが隠れているような気がします。つまり同じ低炎症の状態でも、もともとの進行が遅ければ臨床的利益があると判断するでしょう。つまり予後が伸びたのが免疫療法のためなのかどうかはわかりません。一方中~高リスク群では免疫を続けても、治療を変えてもあまり変わりません。悲観的に考えれば「何をしても変わらない」となりますが、他の抗癌剤に耐えられない、もしくは何らかの理由で他の薬が投与できないため「利益あり」と判断して免疫療法を続けたのかもしれません。少し批判的なことを言いましたが、それでも、今回ごく簡単な指標で意思決定に役立つことを臨床試験の粒のそろった症例で確認できたことは意義あることと考えます。 以前にLIPIの話題を記事にしましたが、似たようなことです。薬剤開発メーカーは臨床試験の個別生データを詳細に開示し、今後に役立てるようにすべきと思います。