PD-L1≧50%への初回ペムブロリズマブ単剤、実地での再現性

5-Year Real-World Outcomes With Frontline Pembrolizumab Monotherapy in PD-L1 Expression ≥ 50% Advanced NSCLC.

Velcheti V et al.
Clin Lung Cancer. 2024 Sep;25(6):502-508
PMID:38880664.

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臨床試験において、進行非小細胞肺癌に対するペムブロリズマブ単剤の初回治療は、化学療法と比較して持続的で臨床的に意味のある長期生存利益を示した。今回は初回ペムブロリズマブ単剤療法を受けた非小細胞肺癌の5年生存率を、臨床試験という理想の状態以外で評価することである。 米国の電子カルテ由来のデータベースを用いて、2016年11月1日から2020年3月31日までに初回ペムブロリズマブ単剤療法を開始した、PD-L1発現が50%以上、EGFR、ALK、ROS1変異なくPS0~1の患者(臨床試験中の患者を除く)を調査した。 データカットオフは2023年5月31日であった。 本試験に適格とされた患者は合計804例で、404例(50%)は女性であった。年齢中央値は72歳(38~85歳)であり、310例(39%)が75歳以上であった。 ペムブロリズマブ投与開始からデータカットオフまでの追跡期間中央値は60.5ヵ月(38.0-78.7)であった。 データカットオフ時には549例(68%)が死亡していた。 OS中央値は19.2ヵ月[16.6-21.4]、5年生存率は25.1%[21.7-28.7]であった。 全体として、266人の患者(33%)が1つ以上の後治療を受けており、最も多かったのは抗PD-(L)1薬(単剤または併用療法)またはプラチナ製剤ベースの化学療法であった。実臨床における5年間の追跡調査において、PD-L1発現が50%以上に対する初回ペムブロリズマブ単剤治療は、長期有効性を示し、生存成績はこれまでの重要な臨床試験の成績と一致している。

感想
ICIも実臨床で使われ始め、10年経ちます。非小細胞肺癌に関しても徐々にその経験が蓄積され、実臨床データをもって生存データを検証すべき時期になってきています。体感として抗がん剤だけで長期生存はかなり例外的であったのが、確実にその数は増しています。今回検討したPD-L1≧50%の初回ペムブロリズマブ単剤の5年生存率は臨床試験で31.9%(KEYNOTE-024)であり、今回の研究結果25.1%と近くなっています。ICIがない時代なら数%ですので、明らかに向上しています。臨床を日々していますと、もはや当たり前の感すらありますが、この検証はあまり多くありません。PubMedで検索してもKEYNOTE-189の実地検証の方が多いくらいです。
さて新しい治療が導入された際に、重要なエンドポイント(主に生存期間)については実地でその数字に大きな乖離がないかどうか確認することが臨床医の役割であると考えています。私はある程度数があるものについては自分の所で確認し、面白ければ多施設に広げたいと考えています。グローバルのデータがそのまま自分の見ている患者集団に応用できるか、つまり臨床試験結果が信用に足るべきものかは自分でデータを取って確認する以外に方法がありません。個人的には日本のガイドライン策定にもこの作業が反映されるべきと考えています。つまり総花的に大規模臨床試験を並べるのではなく、実地での再現性をみるべきであるということです。機械や道具論でいうところの「カタログスペック」だけを見た評価は簡単ですが、それは必要条件であって、実地臨床で威力を発揮してこその利益です。この意味で今回の報告は、少なくとも米国では再現性が確認された、ということになります。