Pembrolizumab for management of patients with NSCLC and brain metastases: long-term results and biomarker analysis from a non-randomised, open-label, phase 2 trial.
Goldberg SB et al.
Lancet Oncol. 2020 Apr 3. [Epub ahead of print]
PMID:32251621
Abs of abs.
未治療の脳転移を有する非小細胞肺癌または悪性黒色腫の患者に対し中枢神経系へのPD-L1阻害薬の効果を見るために第2相試験を行った。中間解析はすでに報告しており、今回は非小細胞肺癌に対するアップデートとなる。この第2相試験はエールがんセンターで行われ、5-20㎜の1個以上の脳転移がある4期非小細胞肺癌で18歳以上を対象とした。脳転移は未治療または放射線治療後に進行が見られること、神経症状なしかステロイド不要であること、PSは2未満であることが適格基準である。病変は修正RECISTが用いられ、他の全身疾患がある場合は参加できなかった。患者は2週毎にペムブロリズマブ10mg/kgを投与され、2つのコホートに分けられた。コホート1はPD-L1=1%以上、コホート2は1%未満か測定不能である。プライマリーエンドポイントは脳転移の奏効率である。患者はすべて奏効、安全性の評価に組み入れられた。2014年-2018年に42人が治療された。追跡期間中央値は8.3ヶ月、コホート1で11/37(29.7%)の奏効が見られた。コホート2では奏効は見られなかった。グレード3,4の毒性は、2人の肺臓炎と大腸炎、副腎不全、高血糖、低カリウム血症が各一人であった。治療関連の重篤な有害事象は6人(14%)に見られ、肺臓炎、急性腎障害、大腸炎、低カリウム血症、副腎不全であったが治療関連死はなかった。今回の結果からペムブロリズマブをPD-L1=1%以上に使うことは有効であり安全である。さらなる研究が求められる。
感想
ペムブロリズマブがPD-L1陽性例の脳転移に効く可能性があるという報告です。今回の患者背景は年齢中央値が60歳、女性が67%、喫煙者が93%、1レジメンまでの前治療が69%、中枢神経系の治療なしが50%、腺癌が86%、ドライバー変異はKRAS33%、EGFR14%の集団です。一般集団と比較して女性が多いわりには喫煙者が非常に多い集団と言えます。コホート1からは37人、コホート2からは5人が含まれます。大まかに奏効状況を見ると、脳に効いているような人は全身にも効いているようであり、脳に効かず全身に効いている人も少しいますが、そのような場合全身に対しての効果はあまり高くないようです。PD-L1陰性または不明のコホート2については脳への奏効が認められませんでした。そのためコホート2を解析から外しつつ書かれており、数字だけ追っていくとわかりにくいです。日常臨床としても知りたいのは効く人についてであり、コホート1(PD-L1=1%以上)についての情報を重視したいところです。コホート1で脳、全身共に奏功している人は18.9%、要約にある29.7%の奏効とは通常のRECIST評価としての数字になります。つまりPD-L1=1%以上でも脳転移に効くのはせいぜい2割程度ということで、EGFR/ALK-TKIのような中枢神経系への高い効果は期待しづらいということになります。脳転移例に劇的に効くことがないであろうことはこれまでの臨床経験からも感じるところです。
さてCOVID-19一色の社会情勢ですが、私のところでも現場が浮足立ち混乱が続いています。がん関連の国際学会からもいくつか声明が出されており、延期できることは延ばしていくのが主旨と思います。またがん患者さんは遠隔診療というわけも行かないので、現実的にできることは少ないように思っています。