RET陽性に対するセルペルカチニブの中枢神経系への効果

CNS Protective Effect of Selpercatinib in First-Line RET Fusion-Positive Advanced Non-Small Cell Lung Cancer.

Pérol M et al.
J Clin Oncol. 2024 Jul 20;42(21):2500-2505.
PMID:38828957.

Abs of abs.
RET融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌におけるセルペルカチニブの中枢神経系への活性は以前に報告されている。しかし強力なRET阻害によって新たなCNS転移の発生を予防できるかどうかは無作為化データなしでは測定困難である。 セルペルチニブ対プラチナ製剤/ペメトレキセド±ペムブロリズマブの無作為化第Ⅲ相試験であるLIBRETTO-431から、CNSの画像経過を調査した。 頭蓋内転帰は、ベースラインおよびベースライン後のCNS検査が1回以上ある患者において、独立中央審査により評価された。 ITTペムブロリズマブ集団のうち、ベースラインCNS検査を受けた192例のうち、ベースラインCNS転移のなかった患者は150例であった。 これらの患者におけるCNS進行の累積発生率は、化学療法+ペムブロリズマブに対してセルペルカチニブで減少していた(ハザード比0.17[0.04~0.69])。 頭蓋内無増悪生存期間のハザード比は0.46[0.18~1.18]であった。 ベースラインに CNS転移を有する42例において、CNS進行の累積発生率(ハザード比0.61[0.19~1.92])および頭蓋内PFS(ハザード比0.74[0.28~1.97])に同様の傾向が見られた。 これらのデータは、セルペルカチニブが既存のCNS転移を効果的に治療し、新たなCNS転移を予防または遅延させることを示している。 これらの結果は、初回治療においてRET融合を同定し、セルペルカチニブで治療することの重要性をさらに補強するものである。

感想
RET陽性肺癌に対する初回治療としてのセルペルカチニブはLIBRETTO-431試験[Zhou C NEJM2023 PMID:37870973]において、PFS24.8ヶ月、脳転移に対する奏効率82%と報告されています(ベースラインで22%に脳転移が存在)。したがってこれまでのEGFR/ALK-TKI同様に脳転移に対しても、かなりの発症予防効果が期待できます。実際にセルペルカチニブの中枢神経系移行は高いとされています。今回はこのLIBRETTO-431試験の中枢神経転移にフォーカスした追加データです。まず投与前の頭蓋内病変に対して奏効までの時間中央値は、セルペルカチニブで 1.4ヶ月でした。リアルタイムで画像モニターするわけではないので、過半数の患者が1回目の画像評価ですでに奏功しているということになります。となるとよほど有症状の脳転移でない限り、放射線治療をするより先にセルペルカチニブを入れましょうということになります。またセルペルカチニブ治療を受けた患者のうち、3.0%(99人中3人)で初回進行部位としてのCNS病変が認められたのに対し、対照群では11.8%(51人中6人)と高くなっていました。これまでの流れからすると、さらに術後補助、化学放射線後の地固めと進んでいくのでしょうが、対象患者はALKよりさらに少なく臨床試験には困難が予想されます。個人的には脳転移の発症はQOLを急激に落とすので、類推でOKとして欲しいところです。