Survival analysis for non-squamous NSCLC patients harbored STK11 or KEAP1 mutation receiving atezolizumab.
Shang X et al.
Lung Cancer. 2021 Apr;154:105-112.
PMID:33640623.
Abs of abs.
STK11またはKEAP1(STK11/KEAP1)変異を有する非扁平上皮型非小細胞肺癌患者にアテゾリズマブとドセタキセルを投与した場合の予後を解析することを目的とした。OAKおよびPOPLAR試験のデータを使ってゲノム変化の頻度とSTK11/KEAP1変異と血中tumor mutation burden(bTMB)/PD-L1発現との相関関係を解析した。コックス回帰モデルを用いて、生存に対する影響を分析した。STK11/KEAP1変異は、扁平上皮型肺癌と比較して非扁平上皮型非小細胞肺癌に多く見られた(7.33 %/10.76 %)。面白いことにEGFR遺伝子変異のある非扁平上皮非小細胞肺癌では、STK11変異は1.56 %、KEAP1変異は3.13 %しか生じていなかった。野生型と比較した場合、STK11/KEAP1変異のある患者はbTMBが高く(P<0.001)、さらにKEAP1変異を有する患者はPD-L1発現が高く(TC3/IC3:25.00 % vs. 14.54%)、STK11変異を有する患者はPD-L1の発現が低かった(TC3/IC3:7.89 % vs. 15.90 %)。多変量解析の結果、STK11/KEAP1遺伝子変異は、全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)の独立した有意な予後因子であった(P<0.05)。重要な点として、STK11/KEAP1変異を有する患者は、アテゾリズマブとドセタキセル両方において、野生型よりも相対的にOSが悪化していた(P < 0.05)。また、STK11変異を取り出してみると、アテゾリズマブはドセタキセルと比較してOSを改善しなかったが(ハザード比0.669[0.380-1.179] P=0.669)、コックス回帰では、KEAP1変異を有する患者がアテゾリズマブを投与された場合、ドセタキセルと比較して生存期間が改善していた(ハザード比=0.610 [0.384-0.969] P=0.036)。今回の結果から、STK11/KEAP1変異を有する非扁平上皮型非小細胞肺癌患者は、野生型と比較して、アテゾリズマブとドセタキセルの両方から得られる利益は多くない可能性がある。しかし、KEAP1変異だけを持ち、STK11変異を持たない患者は、ドセタキセルよりもアテゾリズマブに良い反応を示す可能性がある。
感想
STK11/KEAP1は癌抑制遺伝子です。STK11(LKB1)遺伝子異常は、いわゆるcold tumorを導き、肺癌では抗PD-1抗体薬耐性に関わると言われています。STK11は、細胞成長抑制に関わるタンパクLBK1をコードしています。KEAP1とSTK11は密に関連し両方の遺伝子異常が共存することもまれではないようです。今回はそれらの癌抑制遺伝子の変異の有無の予後への影響を、OAKおよびPOPLAR試験のプール分析を使って見ています。当然抑制系が異常となれば予後不良が予想されます。実際今回の結果は化学療法(ドセタキセル)であろうが免疫療法であろうが予後が悪くなっています。Fig2を見ていくと、STK11やKEAP1変異があるとTMBは低くなり、PD-L1発現はTC0/TC0→TC3/IC3になるにしたがって逆に割合は減っていくように見受けられます。つまりこれらの変異の存在は免疫チェックポイント阻害薬の効果予測にノイズを与えます。ただSTK11とKEAP1変異症例のみ取り出した場合、P値に差はあるものの、アテゾリズマブがドセタキセルを上回るように見えます。この2つの重複変異も23.4%にみられており、区別するのではなくどちらか一方で特定の臨床集団を形成しているのではないかと思います。この変異は文献的にはKRASとの併存も多いようです。
私たちが実践できるのはこのSTK11/KEAP1変異が偶然見つかった場合、平均的予後よりあまり良くないものの免疫療法を試してみる価値があるということです。STK11/KEAP1変異は最近精力的に研究されていますので、更なる情報に期待したいところです。