SUVとPD-L1発現は相関する?

The potential of18F-FDG PET/CT in predicting PDL1 expression status in pulmonary lesions of untreated stage IIIB-IV non-small-cell lung cancer.

Wang L et al.
Lung Cancer. 2020 Dec;150:44-52.
PMID:33065462.

Abs of abs.
今回は18F-FDG PET/CTを使い進行非小細胞肺癌(NSCLC)の肺病変におけるPD-L1発現の予測可能性を検討した。対象として18F-FDG PET/CTの1-4週間後に生検しPD-L1染色を行った未治療ⅢB/Ⅳ期 NSCLC患者133例を使用した。PD-L1発現予測因子のモデル作成および確認のためのコホートに無作為に割り付けた。原発病変の平均および最大SUV値(pSUVmeanおよびpSUVmax)、腫瘍代謝体積(pMTV)、病変部総解糖量(pTLG)を使用した。肺病変におけるPD-L1発現(pPDL1)はTPSを用いて決定し、pPDL1のTPSが1%未満、1~49%、50%以上の場合はそれぞれpPDL1陰性、pPDL1中等度、およびpPDL1強発現とした。pSUVmeanおよびpSUVmax値はpPDL1発現レベルの上昇とともに増加したが,pMTVおよびpTLG値はpPDL1発現とは関連していなかった.モデル作成用コホートでは、pSUVmeanよりもpSUVmaxがpPDL1陰性、pPDL1中等度、およびpPDL1強の独立した予測因子であった。一方pSUVmax<14.4、14.4-17.5、>17.5で区切ると、pPDL1陰性、pPDL1中等度、およびpPDL1強発現の予測因子との示唆が得られた(オッズ比:4.82、3.92、4.45;P=0.002、0.021、0.020)。確認用コホートでは、pSUVmax<14.4、14.4~17.5、>17.5においてpPDL1陰性、pPDL1中等度、およびpPDL1強発現である確率が有意に高かった(P=0.006)。確認用コホートにおけるpPDL1陰性、pPDL1中等度、およびpPDL1強をそれぞれ予測したpSUVmax<14.4、14.4-17.5、および17.5以上の精度は、それぞれ66.7%、75.8%、および84.8%であった。
18F-FDG PET/CTにおけるpSUVmaxは、未治療のⅢB/Ⅳ期NSCLCにおけるpPDL1 TPS<1%、1-49%、50%以上のバイオマーカーであるため、進行NSCLCの免疫治療戦略を決定するのに役立つ可能性がある。

感想
思いもしないSUVとPD-L1発現の関係を検討した報告です。私は知りませんでしたが、PET-CTでのSUV値がドライバー変異やその他のバイオマーカーと関係しているとの報告は数多く出されていました。引用にあるようにEGFR遺伝子変異を予測するものが多いですが、それ以外にも胃癌、乳癌でも検討されています。
さて今回の結果はFig2のDとEに集約されます。PD-L1発現はSUVmeanとSUVmaxと比例するというものです。散布図に何を示しているかよくわからない髭(?)の付いた図をみると、ごくわずかではありますが比例関係が見て取れます。例外も多くありそうで強固なものでないことはすぐにわかります。またPD-L1陰性を拾い上げるROC曲線を書くとカットオフ値が6.1と14.4の2点になったとのことでした。私の勉強不足かもしれませんが、ROCでのカットオフ値が2点というのも見たことがありません。仮に実用化しても解釈に困ります。考察にいろいろ書かれていますが、SUVとPD-L1発現を結びつけるものが今一つはっきりしないので今回の結果は眉唾かも知れません。それでも考えもしないような視点を与えてくれる論文は日常臨床を楽しいものに変えてくれます。今回ICIの効果には記載がなく、今後の検討が待たれます。周知のごとく同じPD-L1強陽性でもICIの効果には大差があります。もし仮にSUVが高いPD-L1強陽性と、SUV発現が低いPD-L1強陽性では効果が違うとしたら非常に有力なマーカーになるのではないかと思います。