TKI後の小細胞形質転換は意外に少ない可能性

Pseudo-small cell transformation in EGFR-mutant adenocarcinoma.

Li R et al.
Lung Cancer. 2021 Mar;153:120-125.
PMID: 33486417.

Abs of abs.
過去2年間の小細胞形質転換(SCT)症例をレビューすることにより、偽SCTの現象を調べた。2017年1月から2018年3月までの間に7282例の肺癌の中から、SCTが報告されている11例を同定した。SCTのすべての初診断時の肺腺癌病理標本を、独立した盲検の病理医によって慎重にレビューされた。免疫組織化学を用いて、L858R、RB1、TP53の発現を同定した。驚くべきことに、SCTとされた11例中8例に、1%~5%未満の変動はあるものの識別可能なSCLC成分が含まれていた。他の2人の患者では、小細胞癌が疑わしい部分が検出された。1人の患者のサンプルだけが以前の腺癌にSCLC成分を含まなかったため、本物のSCTと考えられた。今回の研究では、SCT症例の少なくとも72.7%(8/11)が実際には偽SCTであることがわかった。免疫染色では、L858Rは腺癌成分のみで発現し、SCLC成分では発現しなかったことから、これらは同一細胞クローンからではない可能性が示唆された。RB1欠損および変異型TP53の過剰発現は、偽SCTまたは真のSCTのいずれにおいても見られた。本研究から、実臨床において多くのSCTが偽SCTである可能性があることが示唆される。偽SCTは、これまでのSCTに関する研究の結論に偏りをもたらす可能性がある。SCTの真のメカニズムについて、さらに追求する価値があろう。

感想
EGFR遺伝子変異陽性の耐性機序として小細胞肺癌への転換がありますが、よく見てみると最初からSCLCの成分がある症例が多かったという報告です。小細胞肺癌はもともと混合型が多く。手術例になるとかなりの確率で扁平上皮癌あるいは腺癌成分が見受けられます。今回はおそらく「あると思って」病理医が見た場合であり、このあたりの感覚は病理医全体が合意するかどうかが大事だと思います。論調としては小細胞形質転換を否定するものではなく、思ったよりもはるかに少ないのではないかということでした。一般的な臨床背景として、EGFR遺伝子変異は非喫煙者に多く、SCLCは重喫煙者に多い点で明らかに異なっており、形質転換が同時発生由来が多いとするのは何となくすっきりしません。同時発生であるならば、確率的にL858RとDel19の合併例や、ALK/ROS1との合併例がもう少しいてもよいような気がます。それはともかく現実的に小細胞肺癌への形質転換は頭の片隅に意識すべきことです。今回の検討でTKI治療前のNSEが平均で16.04→37.25に増加しており、フォローアップにはproGRPだけでなくNSEも取っておくことが有効な対策となりそうです。