Phase 1 Study of Rezatapopt, a p53 Reactivator,in TP53 Y220C-Mutated Tumors.
Dumbrava EE et al
N Engl J Med. 2026 Feb26;394(9):872-883.
PMID:41740031.
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レザタポプトは、Y220C変異p53に特異的に結合し、野生型構造でp53を安定化させその機能を回復させる、初めての経口選択的p53再活性化薬である。今回の第I相単群用量漸増・最適化試験では、TP53 Y220C変異を有する局所進行性または転移性固形腫瘍で多剤治療歴のある患者を対象に、21日間連続治療サイクルでレザタポプトを投与した。主要目的は最大耐量用量(MTD)および第Ⅱ相推奨用量(RDD)の決定であった。主要評価項目には用量制限毒性(DLT)および有害事象である。副次的評価項目には予備的有効性および薬物動態学的特性を含めた。77名の患者が8段階の漸増用量(150mg、300mg、600mg、1150mg、1500mg、2000mg、2500mgの1日1回投与、または1500mgの1日2回投与)のいずれかでレザタポプトを投与された。最大耐容量は1日2回1500 mgであった。安全性、有効性、薬物動態データに基づき、食事とともに1日1回2000 mgが推奨第2相用量として選定された。治療期間中、76例(99%)が少なくとも1つの有害事象を、29例(38%)がグレード1または2の有害事象を経験した。最も頻度の高い有害事象は、悪心(58%)、嘔吐(44%)、血中クレアチニン値上昇(39%)、疲労(39%)、貧血(36%)であった。治療関連有害事象は67例(87%)に発生し、グレード1/2の有害事象は48例(62%)で見られた。治療関連有害事象のためレザタポプトを中止した患者は2例(3%)であった。ほとんどの消化器系の有害事象は対症療法で改善し、レザタポプトを食後に投与した場合に頻度が低かった。治療期間中に発生したグレード3以上の有害事象で最も頻度が高かったのは貧血であり、患者の16%に認められた。全患者における奏効率は20%、KRAS野生型腫瘍を有し1日1回1150mg以上の投与を受けた患者群では30%であった。卵巣癌や乳癌を含む複数の腫瘍タイプで奏効が認められた。奏効を示した全患者は、TP53 Y220C変異を有しKRAS野生型である固形腫瘍を有していた。多剤耐性患者を対象とした本第I相試験において、レザタポプトに関連する最も頻度の高い有害事象は悪心・嘔吐であった。複数の腫瘍型で抗腫瘍活性が認められ、p53再活性化のコンセプトの確証が得られた。
感想
通常日常臨床を変えるような大規模第Ⅲ相試験しか載せないNEJMで、第1/2相試験が掲載されることは非常に意味があります。薬の場合は画期的な新薬であることに相当します。今回のターゲットであるTP53は1979年に発見されています。それからまもなく半世紀となり、これまで多くの研究がなされてきましたが、薬としてまとまった数に奏効し広く使われるようになったものはありませんでした。
TP53は癌に幅広く存在し、ほとんどがミスセンス変異が非常に多く出ます。これで生成されるp53変異体は、がん抑制機能をさまざまなレベルで失っています。本文によれば今回のY220C変異p53は全固形腫瘍の1%に存在し、9番目に多いTP53変異です。この変異があることによりp53の融点が低下し不安定化することで、腫瘍抑制機能がなくなっています。ところがY220C変異p53にはポケットがあり、レザタポプトがそこに結合することで立体構造が安定化し、本来の力をとりもどすことができます。つまり(本来の機能が低下した)変異体の再活性化により腫瘍抑制機能を発揮できるようになるという理屈です。結果は要約の通りですが小細胞肺癌が2例含まれており、うち一例は大幅縮小のPRを記録しています。KRAS変異合併例では奏効がなく、偶然なのか何か意味のあることかは不明です。仮にこの薬が成功した場合、KRAS阻害薬との併用も期待されます。TP53変異は種類が多くすべてをカバーする薬はこれからも難しいでしょう。KRASもそうであったように構造上の特徴を狙った個別の薬剤開発が当面の方向性になりそうです。