デュルバルマブ地固め中・後の治療転帰

Outcomes Following Treatment for Progression in Patients Treated With Durvalumab Consolidation in LA-NSCLC.

Stalker M et al.
Clin Lung Cancer. 2025 Mar;26(2):124-130
PMID:39616007.

Abs of abs.
PACIFIC試験により局所進行非小細胞肺癌に対するデュルバルマブ地固め療法が確立した。しかし1年間の治療を完遂した患者は約半数に過ぎず、デュルバルマブ投与後の治療パターンと転帰に関するデータは限られている。今回は2017年~2023年の間にデュルバルマブの地固め投与を受け、その後の全身療法をPD-L1単剤治療、PD-L1+化学療法、化学療法単独、PD-L1+CTLA4治療、分子標的治療に分類し解析した。米国全国データベースの患者を解析対象とした。次治療開始までの期間(TTNT)は、デュルバルマブの投与開始および終了から次ラインの治療開始までとした。デュルバルマブ治療開始後からの全生存期間はKaplan Meier法を用いて解析した。このコホートには751人の患者が含まれ、年齢中央値68歳(61-74)、女性53%、白人80%、PS0-1が91%、喫煙者90%、非扁平上皮組織53%であった。デュルバルマブ投与後の治療で最も多かったのは化学療法単独で349例(46%)、次いでPD-L1+化学療法が147例(20%)、PD-L1単独療法が114例(15%)、分子標的治療が104例(14%)であった。 デュルバルマブ治療期間の中央値は5.5ヵ月(2.3-10.6)であった。デュルバルマブを1年間投与された患者はわずか9%であり、64%は投与開始から1年以内に次の治療を開始した。化学療法を含むレジメンで治療された患者は、デュルバルマブ開始/終了からのTTNTが短く、OS中央値も短かった。化学療法では10.8ヵ月[5.6-18.8]、化学免疫療法では12.9ヵ月[6.0-24.2]であったのに対し、PD-L1単剤療法では23.8ヵ月[8.7-34.5]、分子標的治療では30.1ヵ月[9.5-NR]であった(P<0.001)。今回の検討から、デュルバルマブ地固め療法後に全身療法を受けた患者、特に抗がん剤ベースの治療での転帰は不良であり、治療戦略の改善が必要である。

感想
デュルバルマブの地固めが実地ではかなり低く、抗がん剤を行った患者の生存アウトカムが悪かったという報告です。再度免疫療法をした患者はPD-L1が高いものが多く、デュルバルマブ終了後時間が経って再発したケースが多く含まれます。分子標的治療を行った患者は治療可能なドライバー変異がありそもそも予後が違います。となればデュルバルマブ治療中に悪化してきた(つまり免疫療法に反応せず)化学療法以外に選択肢がない患者の予後が悪いのは当然と言えます。この傾向はFig2とTable1に明らかに見て取れます。それでも全体としてみるとIpi/Nivoの立ち位置が興味深いです。このカテゴリーはデュルバルマブ開始から次治療開始までの中央値が14か月、デュルバルマブ終了から次治療まで5.5ヵ月と比較的長く、割とデュルバルマブの地固めができていた集団です。しかし次治療開始からのOSが12.7ヵ月と、悪いとされた化学療法単独(10.8ヵ月)と大差ありません。詳しい背景がわからず扁平上皮癌が多かったり、喫煙者が多いなどバイアスが多いですが、PD-L1単剤の半分くらいの生存であり、現在のところこのレジメンを選択する理由がありません。
現在の実地医療でも選択は非常に悩ましいです。デュルバルマブ治療中の増悪では保険診療上、進行例の初回治療と見てくれないようです。つまり抗がん剤だけでは力不足とみて、例えばKEYNOTE-189レジメンを行うと、地域によって査定されます。またその論法で行くとIpi/Nivoもダメでしょう。となると2次治療と考えてドセタキセルやS1中心の治療が無難となってしまいます。同様に術後補助化学療法中の増悪あるいは半年以内の増悪も初回治療と見なされないケースが多いようです。つまり術後補助として行ったCDDP+VNR中に再発すると、KEYNOTE-189レジメンは査定される可能性があります。このように維持療法などが複雑化してくると、医学上の治療戦略も必要ですが、保険診療との兼ね合いも考えていく必要がありなかなか厄介です。