ヒスパニック系におけるオシメルチニブの耐性機序

Mechanisms of Resistance to First-Line Osimertinib in Hispanic Patients With EGFR Mutant Non-Small Cell Lung Cancer (FRESTON-CLICaP).

Cardona AF et al.
Clin Lung Cancer. 2022 Sep;23(6):522-531.
PMID:35798634.

Abs of abs.
オシメルチニブは、進行非小細胞肺癌に対する初回治療、再発後にT790M変異のある状態での治療薬として認可されている。本剤の有効性と安全性は、複数の臨床試験で確認されているが、ヒスパニック系での情報は少ない。今回はヒスパニック系コホートにおいて、オシメルチニブ初回治療の実臨床における有効性と安全性を、進行後の転帰に注目して検討した。研究はEGFR遺伝子変異陽性の初回治療としてオシメルチニブの投与を受けたヒスパニック系患者を対象とした多施設、後ろ向きコホート研究である。オシメルチニブ(80mg/日、病勢進行または副作用中止まで)の投与を受けた患者を特定し、組み入れした。病勢進行が認められた場合、腫瘍サンプルまたは血液でNGSを実施した。主要評価項目は無増悪生存期間、副次評価項目は増悪後の生存期間とした。メキシコ、アルゼンチン、コスタリカ、コロンビア、パナマ、チリ、アメリカから計94名の患者を登録、年齢中央値は59歳であった。Exon 19欠失とL858R点突然変異を同定した。無増悪生存期間中央値は14.4カ月[12.4-18.2]であった。肺/胸膜およびリンパ節が最も一般的な進行部位であった。進行後の生存期間中央値は7.73カ月[4.07カ月-未達]であった。PFSに悪影響を及ぼす因子として、診断時の肝転移とTMB5mut/MB以上が関連した。オシメルチニブの初回治療は、ヒスパニック系患者にとって有効かつ安全な選択肢である。肝転移とTMBの高さは、PFSの低さと関連していた。有効性にもかかわらず、このコホートの患者では、他の標的治療の対象となる変異を含む、多くの耐性機序が確認された。

感想
これまでオシメルチニブ耐性機序については多くの報告がされています。EGFRの獲得耐性としてはC797Sが有名であり、その他小細胞癌への形質転換などがあります。第1/2世代TKIが半分弱T790Mで耐性化するのと違って、多種多様な耐性化があり得ます。今回の結果として示唆に富むのはRET変異やBRAF変異などが出てくるパターンではPFSが予後が悪く、T790Mが無くなるパターンでは逆にPFSはきわめて長くなる点です。つまりオシメルチニブが早期PDとなった場合は、再度遺伝子検索を積極的にすべきかもしれません。割合としてはKRAS4.8%、BRAF3.4%、RET2.7%、そして小細胞転化が4.1%でした。今回の論文ではありませんが、それらの耐性化機序としてのドライバー変異に対する治療例もいくつか報告があります、残念なことに純粋に初回治療で使った場合より効きは悪いようです。TMB5mut/MB以下でPFS良好(23.9ヶ月対14.4ヶ月 ハザード比0.31[0.14-0.71]; P=0.003)であったことについてはあまり考察がなくよくわかりません。PD-L1高値についてはTKIの効果が低いことはすでに報告されていますが、TMBについては臨床でのまとまった報告がないように思います。
人種に関わらずTKIについての報告は参考になると思い今回取り上げました。