ペメトレキセド維持療法の投与間隔を延ばしても予後に悪影響を与えない?

Survival outcomes of alternate dosing schedule of pemetrexed as maintenance therapy in NSCLC: Single institution experience.

Faber MG et al.
Lung Cancer. 2022 Jan 22;165:49-53.
PMID: 35085984.

Abs of abs.
進行期非小細胞肺癌におけるペメトレキセド維持療法は生存利益がある。推奨投与スケジュールは、500mg/m2を21日間隔で投与することである。ただし長期にわたるペメトレキセド維持療法で毒性が蓄積される可能性がある。今回は実地臨床として、別スケジュール(代替スケジュール)の維持療法を受けた患者の治療成績を比較した。単一施設のレトロスペクティブ研究で、ペメトレキセド維持療法の投与を2回以上受けた進行非小細胞肺癌患者を調査した。標準スケジュール(3週毎)で開始した場合と代替スケジュール(4週毎以上)で開始した場合における治療期間を比較し、また両群間の無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の差も評価した。129名の患者が対象となり、うち40名は治療開始3サイクル目までに代替スケジュールを開始した(40名中29名は代替スケジュールで維持療法を開始した)。平均維持療法期間は、代替スケジュールで長く(195日 vs. 263日、p=0.008)。全生存期間も、代替スケジュールで長い傾向にあった(11.9ヵ月 vs, 18.1ヵ月、p=0.3)。ALK野生型に限定しても、無増悪生存期間(7.6ヵ月 vs. 11.5ヵ月、p=0.46)および全生存期間(11.9ヵ月 vs, 17.6ヵ月、p=0.38)は依然として代替スケジュールが良好であった。本研究からペメトレキセド維持療法の代替スケジュール(4週間以上の間隔)は実行可能であり、全生存に不利にならない。維持療法における最適な投与スケジュールについて更なる研究が必要である。

感想
実地データでの比較ですので、どんな偏りが背景にあるのかわかりませんが臨床的に重要な問題を取り上げています。なぜ代替レジメンが選択されたのか?については言及がなく、私たちの臨床に当てはめるには不安が残ります。おそらく主治医の裁量で決められているのでしょうが、背景を見ると年齢中央値は64歳 vs. 68歳で代替スケジュールの方が条件的には全体的に不利であるようです。ただALK陽性は1%対7%と代替の方がやや有利です。そのためALK陽性を除外したデータでも検討され、要約で示した通り結果はそのままでした。最近TTF-1陰性例についてペメトレキセドの効果が低いという報告[Frost N ClinLungCan2020 PMID:32620471]もあり、その昔POINTBREAK試験のサブ解析でも同様の結果が示されています(論文化されていません)。つまりペメトレキセドは殺細胞性抗がん剤でありながら分子標的治療薬に近いのだろうと私は思っています。とすればゲフィチニブやアファチニブなどから類推されるように毒性による減量は、おそらく予後に大きな影響を与えないでしょう。日本では祝日が多すぎるので、必然的に代替レジメンに流れる機会が多いかも知れません。ただ化学療法において量とスケジュールを決めた上でエビデンスが出されており、基本的に厳守であることはいうまでもありません。