免疫チェックポイント阻害薬と肝炎ウイルス感染

Immune Checkpoint Inhibitors in Patients With Cancer and Infection by Hepatitis B or C Virus: A Perspective Through the Results of a European Survey.

Tagliamento M et al.
JTO Clin Res Rep. 2022 Dec 15;4(1):100446.
PMID:36687558

Abs of abs.
癌とB型肝炎ウイルス(HBV)またはC型肝炎ウイルス(HCV)の感染を有する患者は、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の臨床試験において十分検討されていない。つまり、この集団におけるICI療法の安全性と有効性は完全に解明されていない。今回はこのテーマに関する腫瘍医の態度を評価した。ヨーロッパの施設で14項目について匿名オンライン調査を行った。56の腫瘍部門(イタリア26、フランス15、スペイン15)の医師が調査に参加し、そこでは主に肺癌、悪性黒色腫、腎細胞癌に対してICIを使用していた。95%がICIを使用とHBVまたはHCV患者の管理ガイドラインの必要性を認識していた。回答者の63%が、ICI投与開始前に患者のHBVとHCVの状態をスクリーニングしており、免疫関連の肝毒性やウイルスの再活性化のリスクは、ほとんどが関心を持っていた。調査対象の腫瘍医のうち、HBVとHCVの感染をICI治療の除外基準と考えているものは、わずか9%であった。さらに回答者の29%がICI開始時に活動性感染症の予防的治療を開始すると回答した。HBVまたはHCVに感染者へのICI投与は、ヨーロッパの腫瘍医の多くの関心事である。ウイルス性肝炎の積極的なスクリーニングと治療は改善していく必要がある。エビデンスに基づく管理を行うには、現状におけるデータが必要である。そのために臨床試験の間口を広げHBVやHCVの患者を登録できるようにすることが考えられる。

感想
臨床的には気になるがあまり気にしたくない問題です。ガイドラインでは抗がん剤(免疫療法を含む)投与前にHbsAg、HBcAb、HBcAb、HCVAbを確認し必要に応じて抗ウイルス剤の投与、定期的スクリーニングが推奨されています。とりあえず調べて対策するものの、分子標的治療単剤、免疫チェックポイント阻害薬がリスク増加につながるのかはよくわかっていません。またモニタリングもシステム化しないと忘れがちです。治験ではHBV-DNA、HCV-RNA陽性例は除外基準に抵触することが多いようですが、実地臨床ではどうなっているのかが今回のテーマです。ICI治療と肝炎ウイルス感染に関心があるものの、治療前にこれらのスクリーニングをしている施設は63%でした。ウイルスの検出されない既感染例では64%の医師がICI治療をするとし、34%がケースバイケースであるとの回答でした。ウイルス感染者についてはがん専門医の77%が、ICI治療前に肝臓専門医にコンサルトするとしましたが、それでも14%は肝酵素上昇してからと回答していました。意外に気にされていないというか、気にしきれないという結果でしょうか。私は一度もみたことはありませんが、HBVの再活性化による劇症肝炎がもっとも恐れられることであり、抗ウイルス薬の侵襲もあまりないので対策はするに越したことはないと思います。ただ現在の私の病院ではウイルス定量が外注であり、結果が2-3日後になるため確認を忘れやすいことが弱点であると思います。ステロイド投与者まで広げると自分のところでも割と測られていないこともあり得ます。