Datopotamab Deruxtecan in Advanced or Metastatic Non-Small Cell Lung Cancer With Actionable Genomic Alterations: Results From the Phase Ⅱ TROPION-Lung05 Study.
Sands J et al.
L. J Clin Oncol. 2025 Jan 6: Epub ahead of print.
PMID:39761483.
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ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd)は、絨毛細胞表面抗原(TROP)-2指向性抗体薬物複合体であり、強力なトポイソメラーゼI阻害作用を有する。 第Ⅱ相TROPION-Lung05試験(NCT04484142)は、分子標的治療およびプラチナベースの化学療法で進行した、標的遺伝子変異変異を有する非小細胞肺癌を対象に、Dato-DXdの安全性および効果を評価する試験である。患者には3週間に1回、Dato-DXd 6mg/kgが投与された。 主要評価項目は、独立中央審査による奏効率であった。 副次項目としては奏効期間、安全性、忍容性、生存期間であった。 Dato-DXdを少なくとも1回投与された137人の患者のうち、71.5%が少なくとも3ラインの前治療を受けていた。 患者の内訳として56.9%にEGFR遺伝子変異、24.8%にALK融合遺伝子変異を有していた。 治療期間中央値は4.4ヵ月[0.7-20.6]であり、奏効率は、35.8%[27.8-44.4]、EGFR遺伝子変異を有する症例では43.6%[32.4-55.3]、ALK融合遺伝子変異を有する症例では23.5%[10.7-41.2]であった。奏効期間中央値は7.0ヵ月[4.2-9.8]、全病勢制御率は78.8%[71.0-85.3]であった。 グレード3以上の有害事象28.5%に発現し、口内炎が最も多かった(全グレード:56.2%;グレード≧3:9.5%)。 5例(3.6%)に間質性肺炎が見られ、グレード5が1例(0.7%]あった。Dato-DXdは、多レジメンの治療歴のある進行非小細胞肺癌において、有望かつ持続的な抗腫瘍活性を示した。 治療関連のグレード3以上の毒性の発現率は、これまでと同様であり、新たな安全性情報は認められなかった。
感想
2次治療以降で行ったドセタキセル対Dato-Dxdの第Ⅲ相臨床試験(TROPION-Lung01)[Ahn MJ JCO2025 PMID:39250535]が別に報告されています。その中でも標的遺伝子変異のあるサブグループにおいては、PFSハザード比0.35と明らかに良い結果が示されています。この話は第1相試験からわかっていたのですが、今回このサブグループに対する前向き試験の結果が公表されました。対象となる遺伝子変異はEGFR、ALK、ROS1、NTRK、BRAF、METエクソン14スキッピング、RETのいずれかとなります。KRASが含まれていない点は要注意です。なぜTROP-2が遺伝子変異陽性例のターゲットになるか、についてはあまりはっきりとは書かれていません。TKI耐性機序と関連するという報告もありますが、多くは未解明です。もともとTROP-2はがん組織に豊富に発現し、正常組織にはほとんど発現していないと言われています。そのためADC療法のターゲットとして考えられてきました。
毒性としては口内炎 (56.2%)、吐気 (54.7%)、脱毛 (49.6%)であり、殺細胞性抗がん剤そのものの有害事象が出ます。良い集団とは言え、PFSはほぼ一定のペースで落ちて行き、とても治癒に導ける印象はありません。しかし現在EGFR/ALK陽性肺癌では、効果は期待できてもTKIでは治癒に導けないことは明らかで、手数は多いに越したことはありません。この結果からすると出番は、TKI、プラチナ2剤の後になりますが、現在進行中のTROPION-Lung14(初回治療としてのDato-DXd + オシメルチニブとオシメルチニブの比較)やTROPION-Lung15(TKI後のDato-DXdとプラチナベースの2剤併用化学療法の比較)の 結果によっては早いレベルに格上げされるかも知れません。
最近の治療開発としてまずlate lineでの効果を確認して徐々にあげていく方向性が目立ちますが、良い傾向と思います。実際TROPION-Lung01の方での標的遺伝子変異のあるサブグループにおいて、OSハザードは0.66、非扁平上皮癌のOS生存曲線は開いて見え、逆に扁平上皮癌でのOSはDato-Dxdの方が下回っています。つまり理由は明確ではないものの、標的遺伝子変異を持つ症例は明らかにDato-Dxdで恩恵を受けそうなことが裏付けられます。